2008年10月8日(水)「しんぶん赤旗」
衆院予算委 志位委員長の質問
トヨタ車体の違法行為追及
派遣を永久に使い続ける
“労働者の配置換え”で規制逃れ
世界トップのトヨタグループが、派遣法制に反して、労働者をモノのように使い捨てする派遣労働を永久に使い続けようとしている問題が浮かび上がりました。七日に行われた衆院予算委員会での基本的質疑で日本共産党の志位和夫委員長が明らかにしました。その恐るべきやり方とは―。
志位委員長 期間制限の意味なくなる
麻生首相 現実に照らして対応
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派遣労働は、臨時的・一時的な業務に限定し、正規雇用の代替としてはならないというのが大原則になっています。この大原則について志位委員長がただしたのに対し、舛添要一厚生労働相は「その通り」だと認めました。
しかし、派遣労働者が増大し、常用雇用の代替にされているのが実態だとして志位氏は、世界一の自動車メーカー、トヨタグループのトヨタ車体(本社・愛知県刈谷市)のケースを取り上げました。
同社では、派遣労働者は二〇〇五年以降の三年間で五千七百三十九人と二倍に増え、全労働者に占める割合は26・3%まで増えているのです。
同社は、プリウスなどをつくっているトヨタグループの中核企業。志位氏が告発した同社での派遣労働の実態は――。
――車のドアやボンネットなど重いものでは二十キロから三十キロある大型部品を段ボールに梱包(こんぽう)する仕事です。多い時には一日千箱、あまりの重労働で腰痛に苦しめられている。
ふすま1枚
――作業は正社員とまったく同じですが、給料は手取りで二十万円と正社員よりはるかに低く、借り上げアパートに住むと五万円以上引かれる。アパートは数人が共同生活をおくっていて、ふすま一枚で仕切られている。
こうした実態のうえ、トヨタ車体では驚くべき違法行為が行われていました。
派遣法では、派遣先が三年以上、継続して派遣を受け入れることを禁じていますが、三カ月超の派遣を入れない期間(クーリング期間)があれば、継続した派遣とはみなさないとしています。
志位氏が、明らかにしたのは、トヨタ車体がこのルールさえ守らず、派遣労働者をそのまま使い続けているという大問題です。
その手口は―。
同社では労働者が「A直」「B直」という二つの班に分かれて、昼夜二交代で仕事をしています。
どちらの班も、作業はまったく同じで、勤務時間帯が違うだけです。九月までは正社員と派遣労働者が一緒になって働いていました。ところが、十月からB班の派遣労働者をすべてA班に移動させて派遣労働者をゼロにする一方、逆にB班にはA班から正社員を移動させて仕事にあたらせることにしました。
これを三カ月と一日続けた後、今度はA班の派遣労働者をすべてB班に移動させて、派遣労働者がいない状態をつくるというものです。
労働者に対し会社側は、「『直』ごとに三カ月と一日、派遣を受け入れない期間を作る。これをやればクーリングオフが成立し、法律(派遣法)がクリアできる」と説明。富士松、刈谷、吉原、いなべの全工場で実施するといったのです。
会社ぐるみ
「こんなことが許されたら、派遣労働者は、永久に派遣という低賃金、使い捨ての不安定雇用に苦しめ続けられる。最大三年の期間制限も意味をなさなくなる。これはトヨタ車体ぐるみの明白な違法行為だ」と迫る志位氏。舛添厚労相は「実態を踏まえて法にもとづいて厳正、的確な指導を行いたい」と答えました。
これはトヨタだけにとどまる問題ではありません。
製造業各社では、「偽装請負」が社会問題となったこともあって二〇〇六年ごろから、請負から派遣に切り替えてきました。
しかし、〇九年に三年の期間制限をいっせいに迎えることから、「二〇〇九年問題」と呼ばれ、各企業は直接雇用に切り替えるなど対応を迫られています。トヨタでこんなやり方が認められれば、期間制限は名もなきものになってしまいます。
志位 昼夜二交代は全国どこでも当たり前に行われている。こんなことを許したら、期間制限は何の意味もなさなくなるではないか。
麻生首相 現実であれば、きちんと現実に照らして法のもとに対応させていただく。
厚労相 期間満了後は指揮・命令が必要な場合は直接雇用にし、そうでない場合は請負にすべきである。再度の派遣受け入れを予定することなく、この方針を貫徹すべく、就業の実態を踏まえ、的確な指導を行いたい。
「現実なら」と明言を避けていた首相も、厳正な対処を言明せざるをえません。
志位氏が「トヨタが違法行為を行っている重大な疑いが浮き彫りになった。調査に入り、違法状態があればただちに是正させるべきだ」と迫ったのに対し、麻生首相は「法にもとづいてきちんと対応させていただく」と答えました。
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