2008年10月10日(金)「しんぶん赤旗」
無料低額診療事業
「届け出あれば受理」
小池議員に政府答弁書
貧困の広がりのなか、生活が苦しい人に医療機関の受診を保障する「無料低額診療事業」が、改めて注目されています。
この事業は、都道府県などの認可を受けた医療機関が実施するものです。低所得者やホームレス、生活保護受給者、DV(ドメスティックバイオレンス)被害者など生活が困難な人も、この医療機関を受診すれば、医療費が無料になるか減免されます。
二〇〇六年度は、二百六十三の医療機関が同事業を実施。のべ六百十八万人以上が利用しました。
厚生労働省は、一九八〇年代後半に「社会情勢等の変化に伴い、必要性が薄らいでいる」などとして、抑制方針を打ち出しました。二〇〇一年には「抑制を図る」と記載した通知を都道府県に送付しました。
この通知以降、医療機関が事業の実施を届け出ても、都道府県がなかなか受理しない状況が生まれています。これは、ホームレスなどの医療保障のために同事業の積極的な活用を呼びかける同省の方針(二〇〇三年作成)と矛盾するものです。
日本共産党の小池晃参院議員は九月末に、「不況の長期化、格差拡大によって生活困難者は増加しており、無料低額診療事業の意義はいっそう大きくなっている」として、抑制方針の転換と事業の拡大を求める質問主意書を提出しました。
これに対し、政府は「低所得者等に対する必要な医療を確保する上で重要」と、事業の重要性を認める答弁書を七日に閣議決定しました。答弁書では、事業の抑制を打ち出した〇一年の通知について「届出の不受理を求めるものではない」と明記。基準を満たした医療機関から届け出があれば「いずれも受理されるべきもの」としました。
全日本民主医療機関連合会(民医連)などは、経済的な理由で受診できない人の権利を守るため、同事業を広げることを呼びかけてきました。今回の政府答弁書は、各地の活動に弾みをつけることになります。
無料低額診療事業 社会福祉法で規定された事業。病院、診療所、老健施設などが実施主体となります。都道府県、政令・中核市への届出が必要です。のべ患者総数のうち生活保護受給者と無料・減額の人が10%以上になる見込みなど一定の条件を満たせば、届出が受理されます。患者は、医療機関などと相談。無料(低額)診療券が発行されると、窓口負担が免除・減額されます。
■関連キーワード