2008年10月11日(土)「しんぶん赤旗」

新テロ法案早期採決容認の民主

“米と衝突避けたい”思惑


 「給油延長を完全に葬り去れば、アメリカと決定的に衝突する」

 八日、民主党が政府・与党の新テロ特措法延長案の早期採決を容認する姿勢を示したのはなぜか―。小沢一郎代表に近い民主党議員の一人はこう説明します。

 政府案に「反対」はするが、徹底的に抵抗して「解散」=廃案に追い込むことは日米同盟基軸の観点からまずい。こうした判断が根底にあるというのです。最高幹部に近い同党関係者も「政権政党を目指す立場から言えば、同盟国との関係で政策の継続性を考慮せざるを得ない」と指摘します。

 また民主党が昨年十二月、政府・与党の新テロ特措法への「対案」となる「アフガニスタン復興支援法案」を国会に提出したことも影響しています。

対案に難題

 この「対案」は、陸上自衛隊をアフガン本土に派兵し、武器使用基準を緩和して「任務遂行上の使用」を容認する内容です。自衛隊を随時海外に派兵できる恒久法の「早期整備」も明記されました。

 また小沢代表は昨年秋、雑誌に発表した論文で、政権をとったらアフガンの国際治安支援部隊(ISAF)に自衛隊を派遣すると明言しました。政府・与党案をしのぐ最悪の派兵構想です。

 しかし、“泥沼”の戦況が続くアフガン本土への派兵や、現憲法のもとでの多国籍軍の武力行使への公然たる参加には、民主党内にも「異論」が強く、党内論議も十分まとまっていません。ある民主党議員は「仮に政権交代が起こっても、民主党『対案』や小沢代表のISAF参加論をすぐ実行に移すことは難しい」と説明します。

 もし民主党政権ができても、直ちにこうした「政策」の実施は難しく「対米貢献」に空白が生じる恐れがある―。こうした事情も給油延長案の「事実上の容認」につながっています。

 別の議員はこう述べます。「『対案』で審議し抜くことが難しい。人によって説明が食い違うなど、バラバラになるのを恐れている」。「(社民党などとの)選挙協力にも影響する」と指摘する民主党関係者もいます。

 民主党の「対案」を継続審議としてきた与党は、新テロ特措法延長案と並べて民主「対案」を衆院での審議に付す対応に出ました。

亀裂の恐れ

 防衛庁長官経験者は「(アフガン)本土に陸上部隊を出し、武器使用基準も緩和するという。恒久法整備も入っている。話してみたい」と述べています。

 麻生太郎首相と与党は、恒久法の整備をはじめ、対米支援のための自衛隊の海外派兵政策の推進を民主党に迫り、揺さぶりをかける狙いです。

 本格審議になれば、選挙を前に民主党内や社民党などとの協力に“亀裂”が生じる恐れもある。それを避けたいという民主党の思惑も見え隠れします。

 「政権交代」を掲げつつ、日米同盟基軸という自民党政治の枠組みを抜け出せない同党が抱える深刻な矛盾の表れでもあります。(中祖寅一)



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