2008年10月11日(土)「しんぶん赤旗」

裁判員の強制は「苦役」では?


 〈問い〉 人を裁くことに強い抵抗感があります。今回の裁判員制度は辞退がむずかしいようです。憲法18条「奴隷的拘束及び苦役からの自由」規定との関係では、どう解釈すべきなのでしょう。(東京・一読者)

 〈答え〉 裁判員制度は、裁判官とともに裁判員が、重大事件の刑事裁判で、被告人は起訴された犯罪行為を行ったのか否かを、法廷で見聞きした証言や物証等の証拠にもとづいて判断し、有罪と決まった時は刑の重さも決めます。日本の刑事裁判は戦前の一時期を除き、職業裁判官のみで行われてきましたが、裁判員裁判では、一般の国民が主権者として刑事裁判に参加することになります。

 裁判員を辞退できない理由を憲法の「意に反する苦役」とのかかわりで問題にされるのは、選ばれた裁判員が自分はやりたくないというだけの理由では、裁判員を辞退できないとされているからです。

 憲法第18条に「犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない」とあるように、懲役囚も印刷とか木工とか一般社会で普通に行われている仕事をしていますが、それが強制的にやらされるところに「苦役」といわれる根拠があります。ですから、「意に反する苦役」とは、仕事の種類にかかわらず、個人の意思に反して労役を強制するような制度をさします。

 裁判員裁判は、殺人、強盗傷害、放火、強姦(ごうかん)致死傷など、死刑または無期懲役にあたる事件などを扱いますので、これに参加することによる負担感は大きいものがあることも事実です。死刑制度そのものを認めたくない人にとって、死刑を含む刑罰をきめる議論に参加することは、少なからぬ精神的苦痛を感じるでしょう。

 「どうしても人を裁きたくない」「死刑の決定にかかわりたくない」と考え、裁判員を辞退したいと主張する人に裁判員を無理やり強いることになれば、「意に反する苦役」に当たることになりかねません。

 しかし、裁判員法にもとづく政令で、辞退を認めることができる理由の中に、「身体上、精神上又は経済上の重大な不利益が生ずると認めるに足りる相当の理由があること」が導入されました。辞退の理由が、思想信条を含め精神的に重大な負担を強いると認められる時は、この場合にあたると考えられます。

 日本共産党は、このような辞退理由については、辞退を認めるよう適切に運用されるべきであると考えます。(光)

 〔2008・10・11(土)〕


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