2008年10月15日(水)「しんぶん赤旗」

原爆症認定問題 国の核兵器固執の姿勢とは?


 〈問い〉日本共産党の総選挙政策に、原爆症認定問題で、国が被爆者と争いつづけている背景に核兵器固執の姿勢がある、とありますが、どういうことですか?(埼玉・一読者)

 〈答え〉被爆者の病気や障害を「原爆症」と認定する基準が非常に厳しいことから、原爆症認定集団訴訟がたたかわれています。各地で被爆者勝利の判決が相次ぎ、4月からは基準が見直され、これまで却下された人たちの認定も始まりました。しかしこの新基準も、被爆の実態や司法の判断に応えたものになっておらず、また国が地裁で負けても高裁で争う姿勢を変えないため裁判が続いています。

 この背景には、米日政府の原爆投下、核兵器問題にたいする許しがたい姿勢があります。

 広島・長崎への原爆投下は、日本の侵略戦争の結果ですが、国際法違反の残虐行為です。国際的な非難を恐れた米国政府は、原爆の物理的威力を誇っても、「きのこ雲」の下で起きたことを隠そうとしました。米軍関係者は、原爆投下一カ月後に“死ぬべき者はすべて死んだ、もう原爆で苦しんでいるものはいない”と発表し、報道や研究発表を禁止しました。

 そして、“原爆投下によって戦争が早く終わった、犠牲を少なくできた”という正当化を今も繰り返し、膨大な核兵器の保有・使用政策を進めています。

 一方、日本政府は日米軍事同盟最優先、アメリカいいなり政治のもとで、「核の傘」に固執し続けています。閣僚が原爆投下は「しようがなかった」とか、核兵器保有論議をすべきだと発言し、国連では核兵器使用禁止決議に棄権しつづけています。

 このような態度こそ、原爆被害から目を背ける要因です。

 従来の認定基準のもとになった広島・長崎での原爆放射線量についての調査は、もともと被爆者の救済のためではなく、アメリカの核兵器開発のために研究されたものです。被爆距離による放射線推定量などを割り出したものですが、問題にしたのは爆発後1分間に放出された初期放射線の影響だけ。放射性降下物などによる残留放射線の影響はほとんど考慮されませんでした。爆発後に救援や捜索で爆心地付近に入った人まで犠牲になり、しかも将来にわたって被害をもたらす原爆被害の非人道性を覆い隠そうとしました。

 こうして従来の認定審査では、爆心地から2キロメートル以遠で被爆した人や爆発後に爆心地付近に入った人は「放射線の影響を受けていない」とされ、被爆者のわずか1%たらずしか認定されませんでした。各判決は、このような認定行政の誤りを厳しく批判し、残留放射線の影響をふくめ、被爆の実態を直視するよう強く求めました。(秋)

〔2008・10・15(水)〕


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