2008年10月21日(火)「しんぶん赤旗」
政権とれば憲法解釈変更
民主政調会長 “国連決議で武力行使”
民主党の直嶋正行政調会長は二十日、衆院テロ特別委員会で、同党が政権についた場合、憲法解釈を変更し、国連決議があった場合には自衛隊による海外での武力行使を可能にする作業に着手すると表明しました。自民党・中谷元議員の質問への答弁です。
中谷氏は防衛庁長官時代に、みずから憲法違反の自衛隊の海外派兵を進めてきたことには口をつぐみつつ、“国連決議があれば海外での武力行使も可能”とする小沢一郎代表の見解について追及。「小沢氏が言われるように、(国連決議があれば)武力行使ができると、民主党は決定したのか」と質問しました。直嶋氏は「(例外的な軍事行動を規定した)国連憲章四二条のような場合であれば可能」と答弁しました。
さらに、中谷氏が「(海外での武力行使はできないとした従来の)憲法解釈を変えるのか」と尋ねたのに対し、直嶋氏は「そういう方針にもとづいて政権を担当させていただければ、作業に着手するということになる」「状況によって憲法解釈を変えることはある。法整備をした上で対応したい」とのべました。
これまでの政府の憲法解釈は、「『国連軍』の目的・任務が武力行使を伴うものであれば、自衛隊が参加することは憲法上許されない」(一九八〇年十月政府答弁書)というもの。直嶋氏の発言は、この解釈の抜本変更を意味するものであり、同党がめざす安全保障基本法の制定を念頭においたものとみられます。
解説
民主の憲法解釈変更
政権交代視野 公然と派兵構想
民主党は二〇〇六年末にまとめた「政権政策マグナカルタ」で「国連の平和活動は…国連憲章41条及び42条に拠るものも含めて、国連の要請に基づいて…積極的に参加する」としています。国連決議があれば自衛隊が海外での武力行使に参加できるという立場です。先に発表した「民主党政策INDEX2008」でも同様の立場を表明しています。
同党の直嶋正行政調会長が、政権につけば憲法解釈の変更作業に「着手する」と答弁したことは、「政権交代」を視野に入れ、この立場が違憲の派兵構想であることを公然と認め、憲法解釈変更にふみだそうとするものです。小沢一郎代表は十月一日の会見で、内閣法制局の廃止にも言及しています。
政府はこれまで、たとえ国連軍との関係であっても、「国連軍の目的・任務が武力行使を伴うものであれば、自衛隊がこれに参加することは憲法上許されない」(一九八〇年十月二十八日、政府答弁書)としてきました。歴代政府が、なし崩し的に海外派兵を重ねながらも、「海外の武力行使の禁止」の原則は、憲法九条に基づく一定の歯止めとなってきました。それを取り払う重大な解釈変更です。
国連憲章四二条は、安全保障理事会が国際平和の維持のために「空軍、海軍又は陸軍の行動をとることができる」としています。直嶋発言や「政権マグナカルタ」は、直接は国連憲章に基づく「国連正規軍」を想定したものです。
しかし、小沢代表は、雑誌に発表した論文で、政権交代を実現したらISAF(アフガニスタン国際治安支援部隊)に参加すると表明しています。ISAFは多国籍軍であり、各国政府がそれぞれの指揮のもとに集団的に戦争状態に入るものにほかなりません。
当面、正規国連軍の編成の見通しがない現在、海外派兵を実現するためには多国籍軍への参加が不可避なのです。それは結局、国連決議を「冠」として米国主導の軍事作戦への参加に道を開くものです。(中祖寅一)
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