2008年10月22日(水)「しんぶん赤旗」
金融危機でも軍事費増
一方で悲観的な見方
米国防総省
米国の金融危機は、同国の軍事予算の行方も不透明にしています。国防総省は今後五年間も大幅な軍事費増をもくろみ、ゲーツ国防長官は「横ばい」にはなっても大幅削減はないとの見通しを表明。一方、米軍制服組トップのマレン統合参謀本部議長はイラク、アフガニスタンでの戦費を確保するのは難しくなるだろうと悲観的です。(山崎伸治)
米議会専門紙コングレショナル・クオータリー(電子版)によると、国防総省は来年一月の次期大統領就任直前の公表を目指し、二〇一四会計年度(二〇一三年十月―一四年九月)までの今後五年間の軍事予算の見通しを策定中です。関係者によると、五年間で合計四千五百億ドル(約四十五兆四千五百億円)の上積みが必要になるとしています。
国防総省は今年二月の予算教書で二〇一三会計年度までの予算の見通しを示しています(グラフ)。現在策定中の見通しはさらに二〇一四会計年度を加えた五年間の上積みを算定しています。二〇一〇会計年度は五百七十億ドルが上積みされる見通しといいます。
ゲーツ国防長官は九月二十九日、ワシントンの国防大学で講演し、質疑で「イラクをめぐってはさまざまな議論があるが、国防の強化や米兵の支援には議会で党派を超えた広範な支持がある」と強調しました。
「冷戦終結」後に軍事費が大幅に削減されたことをあげ、「そのころよりは私たちも賢くなっている」と指摘。「現在直面している経済問題があるが、冷戦終結をめぐっては重要な教訓もあった」との言い回しで、金融危機があっても軍事費は確保すべきだとの考えを強調しました。
これに対しマレン統合参謀本部議長は、金融危機が将来の軍事費にも大きな影響を及ぼすだろうとの見通しを示しています。
十月九日付の米インターネット紙コングレショナル・デーリーによるとマレン氏は、イラク、アフガニスタンでの戦費を「追加予算」として要求することは難しくなるとの見方を表明。「追加予算に盛り込んでいたもので、長期的には確保すべきものを本予算に取り込むことが必要だ」と述べました。
ブッシュ政権はこれまで戦費を本予算に盛り込まず、追加予算に計上することで、議会で長期にわたる審議を避け、予算の速やかな確保を行ってきました。マレン氏の言明はそれが難しくなるとの認識を示したものです。
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