2008年10月25日(土)「しんぶん赤旗」
「75歳」以上を「後期高齢者」と呼ぶわけは?
〈問い〉 「後期高齢者」を「75歳」で区切った理由を政府はなんと説明しているのですか?(愛知・一読者)
〈答え〉 後期高齢者医療制度は、75歳以上を一律に“後期高齢者”と決めつけ“現役世代”から切り離し、まったく独立した医療保険に加入させる制度です。国民皆保険制度の国では他に例がありません。
政府は「75歳」で区切った理由について口を濁していますが、理由は、次の三つです。
(1)治療の長期化、複数疾患への罹患(りかん)が見られる。
(2)多くに、認知症の問題が見られる。
(3)いずれ避けることができない死を迎える。
これは、厚生労働省の社会保障審議会後期高齢者の在り方に関する特別部会の報告書に明記されていることです。
日本共産党の小池晃参院議員は国会(3月の参院予算委員会)で、この「三つの理由」を示し、「こんな考え方で制度をつくれば、差別医療になるではないか」と迫ったのに対して、舛添厚労相は「死に直面した人に、きめの細かい手当てをするためのものだ」と、この理由を合理化しました。
しかし、後期高齢者医療制度の導入が「きめ細かい手当てをするためのもの」なら、日本中の高齢者がこんなに怒るはずがありません。
制度の目的が高齢者の医療費を削ることがねらいであることは明らかです。後期高齢者医療制度の設計にかかわった厚労省の担当官は、制度のねらいを次のように語っています。
「あまりむずかしいことはいわずにズバッと本当のことをいいます…、後期高齢者医療制度を独立型保険にしたのは、将来60兆円にもなる医療費を抑制するためだ…医療費が際限なく上がり続ける痛みを、後期高齢者が自分の感覚で感じ取っていただくことにした」(1月18日石川県内で開かれた後期高齢者医療フォーラムでの厚労省国民健康保険課課長補佐の講演)
日本の社会とは、77歳なら喜寿、88歳で米寿、90歳で卒寿、99歳で白寿と高齢を心から祝う社会でした。かつて、日本共産党が与党の革新自治体が多くあった70年代には70歳以上の医療費は無料でした。それが80年代になって逆転し、老人医療を有料化する老人保健法が82年8月、自民、公明、民社、新自連(新自由クラブと社民連の統一会派)の賛成で成立し、83年2月、同法の施行で10年続いた老人医療無料制度が廃止されました。以来、改悪につぐ改悪で福祉・医療は後退してきました。
財源を理由にして、高齢者の医療費からまず削る。こんな政治に未来はありません。力を合わせて後期高齢者医療制度を廃止させましょう。(喜)
〔2008・10・25(土)〕