2008年10月26日(日)「しんぶん赤旗」

主張

国際金融危機

新しい秩序求める世界の流れ


 北京で開かれたアジア欧州会議(ASEM)首脳会合は、当面する金融危機への協調した対応とともに、金融の監督・規制の強化や国際金融システムの実効的で包括的な改革を打ち出した共同声明を発表しました。

 アジアと欧州の四十五加盟国・機関の首脳が会した今回の会議は、米国発の金融危機が世界を揺さぶる中で開かれた初めての大規模な首脳会議です。国際金融システムの改革が合意されたことは、米国が進めてきた「新自由主義」にもとづく規制緩和と市場原理一本やりの流れが、もはや通用しなくなったことを示しています。

危機再発を防ぐには

 米国発の金融危機は世界のいたるところで実体経済にも悪影響を及ぼしています。ASEMは当面の対策として、各国の政策協調と国際通貨基金(IMF)による支援を呼びかけました。

 同時に、危機を再発させないように金融システムを改革することも焦眉(しょうび)の課題です。声明は「金融のあらゆる参加者に対する監督・規制を改善することが必要だ」としています。バローゾ欧州委員長は演説で「市場にはルールが不可欠だ」と述べ、「透明性、責任、説明責任、国境を越えた監督、グローバルな管理」を挙げました。

 欧州連合(EU)議長国であるフランスのサルコジ大統領らは投機資金や格付け機関、デリバティブなど金融技術、タックスヘイブン(租税回避地)などへの規制や金融機関の透明性確保などの必要を指摘しています。イギリスのブラウン首相も、金融リスクのグローバル化を踏まえたIMFの改革などの提案を示しています。今回のASEM声明もこうした議論を反映したものです。

 アジアの多くの国々はすでに一九九七年の「アジア通貨危機」で、ヘッジファンドなどの投機資金によって自国通貨を売り浴びせられました。IMFから融資を受けたものの代償に過酷な緊縮政策を強いられ、国民生活が大きく疲弊しました。マレーシアなどは短期資金の流れを規制することで危機を克服しましたが、これには米国が反対しました。

 一方、欧州には、二〇〇七年のドイツ・ハイリゲンダムでのG8サミットに表れたように金融の規制強化を求める流れがあるものの、米国の反対で実らないままとなってきました。金融システムが大きく揺らぐ中、規制強化はアジアにとっても欧州にとっても緊急の課題となっています。

実効ある提案を

 ASEM声明は、包括的な改革では合意したものの、IMF改革のあり方をはじめ具体的な方策を提示していません。

 IMFは各国に緊縮政策と規制緩和を押し付け、アジア、中南米、アフリカなどの途上国に不信を植えつけました。金融監督機能の強化だけでなく、より根本的な改革案が提示される必要があります。議決権が出資比率に応じ、米国が拒否権をもっていることが問題であり、各国の議決権を抜本的に保障する民主化が必要です。

 十一月十五日にはワシントンで米国、欧州、日本、中国、インド、ブラジルなどによる首脳会議が開かれます。この会議が、ASEM声明に盛られた方向性を受けて、実効性のある提案を出せるかが問われています。


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