2008年10月28日(火)「しんぶん赤旗」
介護保険
要介護認定調査項目 来年4月から削減検討
厚労省
現場から不安の声
厚生労働省が、介護保険の「要介護認定」のための調査項目を、来年四月から削減する検討をすすめています。同省は、現行の八十二項目のうち十四項目を削除する案を提示(別項)。現場からは「介護度が軽く認定されるのではないか」など、不安の声が上がっています。
要介護認定では、市区町村の職員やケアマネジャーなど調査員が高齢者を訪問して、日常生活や体の状態などについて聞き取り調査をします。これをもとに、どれくらいの介護サービスを受けることができるか、コンピューターで一次判定します。その結果と聞き取り調査の内容などをもとに、市区町村の介護認定審査会が二次判定で決定します。介護度は「要支援1―2、要介護1―5」の七段階で、「非該当」(自立)と判定されると、介護保険のサービスは受けられません。
厚労省は二〇〇六年十月、「要介護認定調査検討会」を発足させ、「認定調査項目が多く煩雑である」として見直しの検討を始めました。
今年五月には、現行の八十二項目に、「調理」「買い物」など六項目を新たに追加する一方、「幻視・幻聴」「外出して戻れない」など二十三項目を削除する案をまとめました。
「軽度になる」
これに対して介護現場からは、「これまで以上に認定が軽くなる可能性が高いこと、特に認知症高齢者の認定が軽くなることが心配される」など異論が続出。「負担が軽減される」と項目削減に賛成する自治体からも「大幅な削減により情報不足となり、認定審査会の審査・判定が不安定になる」「問題行動の多い認知症の方の場合、介護度が軽度になる可能性がある」などの意見が出されました。
このため、八月の検討会では、九項目を復活させた「修正」案をまとめました。しかし十四項目はあくまで削除する方針です。
実態の反映は
削除される項目には「じょくそう(床ずれ)」「火の不始末」など、ケアマネジャーから「命にかかわる内容であり、介護負担や介護量に影響を与える」と指摘されるものが含まれています。項目がなくなれば、調査員が特記事項を記入する欄もなくなるため、認定審査会などに重要な情報が伝わりにくくなります。
いまでも、「要介護2だった高齢者が要支援2になる」など判定が軽くなり、必要なサービスが受けられなくなる事態が広がっています。調査項目の削減で、ますます高齢者の健康と生活の実態からかけはなれた認定結果が続出するおそれがあります。
厚労省は現在、新しい調査項目による要介護認定のモデル事業を実施。十一月下旬には結果をまとめるとしています。介護が必要な人が排除されないようにすることが必要です。(秋野幸子)
削除が検討されている要介護認定の調査項目(14項目)
(1)火の不始末、(2)幻視・幻聴、(3)暴言・暴行、(4)不潔行為、(5)異食行動、(6)拘縮(ひじ関節)、(7)拘縮(足関節)、(8)じょくそう、(9)皮膚疾患、(10)飲水、(11)環境等の変化、(12)電話の利用、(13)指示への反応、(14)日中の生活
引き続き調査項目に「復活」した調査項目(9項目)
(1)外出して戻れない、(2)一人で出たがる、(3)収集癖、(4)物や衣類を壊す、(5)作り話、(6)感情が不安定、(7)同じ話をする、(8)大声を出す、(9)落ち着きなし
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