2008年10月31日(金)「しんぶん赤旗」
国保証ない子3万3000人
医療からの排除 浮き彫り
厚労省調査
親が国民健康保険の保険料(税)を払えないために国保証を取り上げられ、「無保険」状態になっている中学生以下の子どもが、全国で三万二千九百三人にのぼることが三十日、厚生労働省の調査でわかりました。何の責任もない子どもたちが医療から排除されている実態が浮き彫りになりました。
実態調査は、日本共産党などが求めていたもの。「無保険」の子どもの全国調査は初めてです。
調査(九月十五日現在)によると、国保料を滞納している世帯は、全国で約三百八十五万世帯(加入世帯全体の18・5%)。このうち、資格証明書を発行された世帯は約三十三万世帯でした。
国保証を取り上げられた世帯の子どもを年代別にみると、〇―六歳が五千五百二十二人、小学生が一万六千三百二十七人、中学生が一万一千五十四人でした。都道府県別では、神奈川(四千三百八十六人)が最も多く、千葉(三千三百二十一人)、栃木(二千六百五十二人)と続きました。
資格証明書の発行前に市区町村が滞納世帯にとった対応は、文書による催促(88%)が多く、自治体によっては、事情を聞くなどきめ細かな対応をしないまま国保証を取り上げていることが浮き彫りになりました。
資格証明書は、市区町村に発行が義務づけられた二〇〇〇年以降、大幅に増えています。発行を義務づけた国保法改悪(一九九七年)には、当時の自民、民主、社民の各党が賛成しました。
厚労省は、医療を受ける必要がある子どもには、有効期限一カ月などの短期保険証の発行などを求めました。
子ども無保険証問題
機械的取り上げが横行
病気になりやすい子どもがいる世帯であっても、お構いなしに保険証を機械的に取り上げる―。厚生労働省が三十日公表した国民健康保険の「資格証明書」発行についての調査は、行政の非情な対応を浮き彫りにしました。
政府・厚労省は、保険料を滞納した場合でも「特別な事情を考慮する」などと強調してきました。資格証明書の発行は、「滞納者と接触の機会を増やし、保険料の納付を促す」というのが口実だからです。
ところが、自治体の現場では、まったく異なった対応です。
厚労省は今回の調査で、地方自治体が滞納者にどのように接触しているかを調査しました。休日の電話督促や訪問をしている自治体は22―26%。時間外で対応しているのは55%程度でした。圧倒的多数は文書を送りつける催促(88%)、電話での催促(67%)です。資格証明書の発行が滞納者との接触機会を増やすという厚労省の言い分が成り立たないことを示しています。
同時に、住民の運動と日本共産党の議員団の取り組みで、子どものいる世帯への資格証明書の発行を取りやめる自治体や、資格証明書の発行そのものを中止した自治体も生まれています。
国民の医療を受ける権利を奪う資格証明書の発行という制裁手段は、ただちにやめるべきです。(宮沢毅)
資格証明書 国保料を1年以上滞納している世帯のうち、支払いが困難な「特別な事情」がないと市区町村が判断した世帯に対し、国保証の取り上げと引き換えに発行されます。資格証明書では保険がきかず、医療機関の窓口で医療費の全額(10割負担)を支払わなくてはなりません。このため受診抑制や治療中断などが起き、深刻な問題となっています。
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