2008年11月2日(日)「しんぶん赤旗」

更迭の空幕長

侵略美化 就任前から

隊内誌に論文 政府の任命責任重大


 「我が国が侵略国家だったというのは濡衣(ぬれぎぬ)」などと、かつての日本の侵略戦争を美化する論文を執筆し、空幕長を更迭された田母神(たもがみ)俊雄氏が、空幕長就任前から同様の侵略戦争美化論文を航空自衛隊の隊内誌に発表していたことが一日までに分かりました。

 同氏は、安倍内閣時の二〇〇七年三月に閣議で了承されて空幕長に就任しました。麻生太郎首相は「(論文は)個人的に出した」ものだと釈明しますが、こういう人物を任命した自公政権の責任は避けられません。

 論文が掲載されていたのは、『鵬友』という隊内誌(隔月刊)。「鵬友発行委員会」と「航空自衛隊幹部学校幹部会」が編・発行しています。

 田母神氏が統合幕僚学校長時代の〇三年七月号から〇四年九月号まで四回にわたって「航空自衛隊を元気にする10の提言」を掲載。「東京裁判は誤りであった」「南京大虐殺があったと思い込まされている」などと、侵略の事実さえ否定。日本の占領地統治を「慈愛に満ちたもの」などと美化しています。

 また、扶桑社の『新しい歴史教科書』を「歓迎」し、「自衛隊にも国の機関として国民が正しい歴史観を持つためにやれることがあるのではないか」と主張。「総理大臣の八月十五日における靖国参拝も可能になるであろうことを期待している」と求めています。

 また空幕長就任後の〇七年五月号には、「日本人としての誇りを持とう」という論文を寄稿。この中で「日本は朝鮮半島や中国を侵略し残虐の限りを尽くした」ことについて「ウソ、捏造(ねつぞう)の類(たぐい)」と、事実を全面否定。「コミンテルン(共産主義インタナショナル)に動かされているアメリカ」によって「日本は日米戦争に追い込まれていく」という妄想を展開しています。

 田母神氏は、論文が陸自や海自でも配布されていることを自慢しており、防衛省・自衛隊内では周知の事実だったとみられます。それを黙認してきた防衛省・自衛隊の体質とともに、発言を問題視せず防衛相に「助言」する空幕長に任命した政府の責任は重大です。



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