2008年11月2日(日)「しんぶん赤旗」
汚染米 “主犯”は農水省
局長通知 「誤記」の弁解 通用せず
43年前から「事故米穀の主食用売却」
事故米の主食用売却さえ推奨していた農水省への怒りが広がっています。発端は「しんぶん赤旗」(十月二十五日付)報道です。日本共産党の紙智子参院議員が明らかにした農水省の総合食料局長通知に、事故米を「極力主食用に充当する」「事故米穀を主食用に売却する場合」という処理方針が明記されていたからです。農水省は、事故処理要領に“書き間違い”があったと弁解をはじめました。しかし、国民の不信感は強まるばかりです。(宇野龍彦)
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問題となった文書は、農水省総合食料局長名で各地方農政事務所などにだされた「物品(事業用)の事故処理要領」(二〇〇七年三月三十日付)。当時、松岡利勝農水相のもとで同文書を出した岡島正明総合食料局長は現在、農水省の官房長。この問題でなんの説明もしていません。
販売手順を記載
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同要領には、米や麦などの「事故品」をどう処理するかというマニュアルが書かれています。汚染米などの「事故品」は「極力主食用」として売却することを推奨していました。同省の農政事務所長などが「主食用不適」と認定した「事故米穀」まで「主食用」に販売する手順が書かれていました。
農水省は、「しんぶん赤旗」報道をうけて、あわてて二カ所を字句修正した町田勝弘総合食料局長名の通知(十月二十七日付)をだしました。
「誤記」といって字句修正した部分は、同要領の「事故米穀を主食用として卸売業者に売却する場合」と「事故米穀を原料とする生産精米」の記述。「事故米穀」は、「事故品」の「誤記」で、つまり書き間違えたという弁解です。
65年通知を継承
しかし、このような公文書を、書き間違えることは本来ありえません。二〇〇七年三月の事故処理要領は、農産物価格安定法と食料管理特別会計の廃止にともなって制定されました。売却処理の方針として、新たに「事故品については、極力主食用に充当する」と、事故米の主食推奨がつけ加えられているのです。
それまでは一九六五年(昭和四十年)の食糧庁長官通知「物品(事業用)の事故処理要領」が使われていました。じつは、そこでも「事故米穀」という言葉が使用され、「事故米穀を主食配給用として卸売業者に売却する場合」「事故米穀を原料とする生産精米」ということが明記されていました。この考え方を引き継いだのが、二〇〇七年三月の事故処理要領です。いまになって「誤記がある」という説明が成り立つ余地はどこにもありません。
輸入米、国産米を問わず、残留農薬やカビ毒などで汚染された米まで含む事故米すべてを対象にして、主食用売却を推奨したのが〇七年の総合食料局長通知です。農水省が、三笠フーズのやった不正が見抜けなかったのではなく、問題の原因をつくったことは明白です。
輸入汚染米転売を監視・防止する手だてをとってこなかった政府の「行政不作為」の責任にとどまらず、汚染米の主食用売却推奨を明記したマニュアル(同要領)をわざわざつくった農水省の責任も重大で、何の根拠もなく「書き間違い」といってごまかすことは許されません。
国民だましの言い逃れ
紙参院議員の話
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農林水産省が総合食料局長通知について「誤記」だったと言い逃れをし、国民をだまそうとしていることに怒りを覚えています。
この局長通知は、食管法時代の一九六五年にだされた食糧庁長官通知「物品(事業用)の事故処理要領」を踏襲したものです。この食糧庁長官通知は二〇〇七年三月二十九日まで使われ、その後食糧法の改正で、問題の局長通知に改定されたのです。経過からみても、誤記ではないことは明確です。その事実を隠して、「誤記」だとわざわざ総合食料局長名で文書をだすことは、農水省全体で国民をだますことになり、町田総合食料局長と石破農水相の責任はきわめて重大です。その責任を徹底的に追及していきたい。
「赤旗」報道後 TV・新聞 後追い
事故米の主食用売却が推奨されていたという「しんぶん赤旗」(十月二十五日付)の報道を契機に、「農水省が『食用』奨励!? 事故米問題で新事実」「『汚染米』局長通知「事故品、極力主食用充当」などと、テレビのニュース番組や新聞などもとりあげ、波紋が広がっています。
東京新聞(十月三十一日付)は農水省の「無責任体質が浮かび上がってきた」と指摘し、総合食料局長通知について報道。農水省はこの文書の存在が「二十五日付『赤旗』で報道された後、『単純な書き間違え』」とし、各農政事務所に「『事故米穀』は『事故品』の間違い」と訂正メールを出しているとしました。そして、「食の安全に直結する重要な部分、しかも出先機関の対応を定める重要文書を書き間違えるものなのか」と指摘。
「しんぶん赤旗」同日付で明らかにしていた一九六五年の食糧庁長官通知についても、東京新聞(十一月一日付)は「旧食糧庁長官通知の汚染米 40年前から主食に?」と報道しました。
総合食料局長通知「物品(事業用)の事故処理要領」(2007年3月30日付)
第1 方針
政府所有物品(事業用)に亡失、損傷等の事故が発生した場合は、その原因を糾明するとともに損傷を受けた物品(以下「事故品」という。)については速やかに適切なる処分を行って被害を最小限に止め、国が損害を被ったときは責任の所在を明らかにして、それぞれの契約条項に基づき求償又は無責の措置を講じる。
第2、第3 略
第4 事故品の売却処理
事故品については、極力主食用に充当するものとし、主食用に充当できないもので分任物品管理官が主食用不適として認定した米穀(以下「事故米穀」という)及び事故品として認定した麦類の売却処理は、品質の程度を勘案の上、用途決定し、次により処理するものとする。
ただし、病変米のため主食用不適認定された米穀の処理については、その数量にかかわらず、非食用に処理するものとする。
(1、2、3略)
4 売却計画
(1)略
(2)(注 値引き売却)なお、事故米穀を主食用として卸売業者に売却する場合(以下略)
食糧庁長官通知「物品(事業用)の事故処理要領」(1965年3月8日付)
第1、第2、第3(略)
第4 事故品(損傷物品)の売却処理
所長が配給不適認定した事故米穀ならびに事故品として認定した麦類、農産物等の売却処理は次によるものとする。
1、2、3(略)
4 売却計画(略) なお事故米穀を主食配給用として卸売業者に売却する場合(以下略)
「事故品」と「事故米穀」 「事故品」とは、米や麦などで水濡れや油濡れ、カビがはえたものから、残留農薬やカビ毒で汚染されるなど食品衛生法に違反するものまでを含んでいます。農水省は、これらの損傷した米について、これまで「事故米穀」として取り扱ってきました。農水省の事故処理要領では、これらの明確な区分や判断基準は示されていません。