2008年11月3日(月)「しんぶん赤旗」
主張
文化の日
芸術や文化を楽しめる社会に
芸術の秋―。コンサートや演劇、映画館、美術館にお出かけになりましたか。すぐれた芸術作品は、国や時代の違いを超えて、私たちの心を深くとらえます。
芸術や文化は心豊かなくらしに欠かすことができません。それらをつくり楽しむことは人びとの権利であり、その条件を整えることは政治の責務です。
国民も専門家も困難に
ところが、先月発表された内閣府「消費動向調査」によると、十―十二月期にコンサート、演劇、映画、美術館、博物館等への支出を「今より増やす予定」と回答した世帯は7・6%にとどまり、逆に「今より減らす予定」の世帯が14・3%に達しました。差し引きでマイナス6・7ポイントという数字は過去十年間で最悪です。
二〇〇三年の内閣府の「文化に関する世論調査」では、一年間に「ホール等での文化芸術の直接鑑賞経験」があるかとの問いに「ない」と答えた人は48・8%でした。国民の半数は、一年に一度も生の舞台を見たり、映画館に行ったりしたことがないという実情です。先の「消費動向調査」と重ねれば、今日その状況がいっそう厳しくなっているのは明らかです。
自公政権の「構造改革」路線が雇用の悪化、社会保障の連続改悪などで国民のくらしを直撃し、貧困と格差の拡大にくわえ、金融危機に伴って不況が深まっていることが、その背景にあります。こうして多くの国民が芸術・文化から遠ざけられているのです。
芸術団体や専門家のおかれている状況も深刻です。
麻生首相は十月二十六日、東京の秋葉原で、漫画やアニメを例に「日本のもっているサブカルチャーの力」を誇り、「日本って国は意外と元気」と演説しました。
しかし、アニメの製作現場は極端に劣悪な労働条件におかれ、アニメーターを志す若者は「半年で半分、一年で七割が業界を去っていく」といわれています。
舞台芸術の実演家の収入も減る一方です。さらに、民間劇場や映画館の閉鎖が相次ぎ、文化活動の基盤が脅かされています。
にもかかわらず自民党政治は、文化をうみだす専門家や芸術団体に冷たいままです。文化庁予算は今年度千十八億円にすぎず、米軍への「思いやり予算」二千五百一億円のたった四割です。そのうち芸術・文化振興費は三百九十六億円で、トヨタ一社への研究開発減税七百七十九億円の半分です。
国家予算に占める文化関係予算の比率は、文化庁の調査でもフランスや韓国の約七分の一という水準です。地方自治体での文化予算の削減も深刻です。こういう政治を切りかえ、文化予算を抜本的に増やすことは急務です。
文化活動の自由を守る
十一月三日を「文化の日」と定めてから今年で六十年。祝日法はこの日を「自由と平和を愛し、文化をすすめる」日としています。文化の自由を圧殺し、他民族の文化をふみにじった戦前への反省がそこには込められています。
日本共産党は、戦前の小林多喜二「蟹工船」の時代から平和と民主主義を掲げ、表現の自由のために命がけでたたかってきた政党です。その立場から、現在も将来も文化活動の自由を守り、国民が芸術・文化をつくり楽しむ権利を確立するために力をつくします。