2008年11月4日(火)「しんぶん赤旗」
ねんきん特別便 発送終了
分かりにくい欠陥露呈
低回答率 記録統合に限界
社会保険庁が、昨年十二月から年金受給者・加入者約一億人を対象に送ってきた「ねんきん特別便」は、十月末で発送作業を終えました。「特別便」は、誰のものか分からない五千万件以上の年金記録の持ち主を探す目的で送られたものですが、回答率は低く、記録統合に結びついたケースはごくわずかです。
「特別便」に記載されているのは年金加入の履歴です。受け取った人が加入記録の空白期間や記録の誤りを自分で発見し、「訂正あり」と回答しなければ、記録の統合が進みません。
未統合記録のある可能性が高い人にも、そのことが分かる仕組みになっていないことが実施前から問題となり、改善を求める声が上がっていました。
三月までに送られた千三十万人(受給者三百万人、加入者七百三十万人)は、とくに記録の持ち主の可能性が高い人たちでした。ところが九月三十日時点での回答率は六割強で、三百二十二万人(31・2%)が未回答。「訂正あり」と回答した人は、三百九十五万人(38・3%)にとどまりました。(図)
社保庁が、「訂正なし」と回答した受給者のうち約二十四万人に電話や戸別訪問で照会したところ、実際には78%に当たる約十八万七千人が、記録の持ち主であることが判明しました。本人からの「申請」を待つやり方では、記録の統合が進まないことはこのことからも明らかです。
四月から十月にかけては、残りのすべての受給者(約三千四百万人)・加入者(約六千五百万人)に「特別便」が送られました。こちらの回答率はさらに低く、九月三十日時点で50%。回答した人の九割が「訂正なし」としています。
せっかく、全員に加入記録を送付しておきながら、不親切で分かりにくいという欠陥を直さなかったため、記録統合の解決には効果を上げることができなかったのが実態です。
社保庁によれば、九月九日までに記録の統合が進んだのは、五千九十五万件中、七百五十一万件(14・7%)。このうち「特別便」がきっかけとなったのは二百六十万件だけです。
政府は、「一人の被害者も出さない」という立場で、今のやり方を抜本的に改善し、社保庁が管理・保有している情報を分かりやすく国民へ提供することが急がれています。
|
■関連キーワード