2008年11月5日(水)「しんぶん赤旗」
労働者派遣法の改定案
求められる抜本改正
労働者派遣法の改定案が四日、閣議決定されました。人間をモノのように使い捨てする働かせ方をやめさせ、派遣労働者を保護することができるのか、検証してみると―。
「登録型」の規制
社会問題となった日雇い派遣について、三十日以内の短期派遣を禁止します。
しかし、三十日超の労働契約さえ結べば、職場を転々とする日雇い・スポット派遣を続けることも可能であり、通訳や事務機器操作など十八業務については専門性が高いとして期間制限はありません。三十日を超えていれば不安定な短期派遣はいくらでも可能です。
日雇い派遣が急増したのは、雇用が不安定な「登録型派遣」(派遣元に登録し、仕事があるときしか働けない)を認め、対象業務についても一九九九年に原則自由化したためです。
使い捨て労働を増大させた原則自由化前に戻し、派遣労働は常用雇用を基本とし、日雇い派遣は全面禁止するとともに、登録型派遣は例外として厳しく規制すべきです。
「みなし雇用」導入
偽装請負など違法行為があった場合、派遣先が派遣労働者に対して雇用契約を申し込むよう行政が勧告できるようにします。
派遣先が何ら責任を問われない現状に比べれば変化ですが、偽装請負が認定されても派遣労働者が雇い止めされているキヤノンや日亜化学の現状を見れば、極めて不十分です。
違法行為があれば派遣先と派遣労働者の間に雇用契約が成立しているとみなす「みなし雇用」を導入すべきです。ドイツやフランスなどで確立しており、日本でも松下プラズマ偽装請負事件で大阪高裁が、雇用契約が成立していることを認め、松下側に直接雇用を命じています。
「均等待遇」の実現
派遣労働者の待遇改善や不安定雇用の是正について、派遣先労働者との「均等待遇」は盛り込まれず、「考慮」するにすぎません。登録型派遣の常用雇用化なども「努力義務」にとどまっています。
均等待遇は欧州諸国では常識であり、常用雇用の代替に対する歯止めにもなっています。十月二十二日には欧州議会が、加盟二十七カ国に対し三年以内に国内法に適用するよう指令案を採択しました。
派遣元による“ピンはね”を防ぐため必要なマージン(利ざや)率の上限規制はせず、全体の平均額を知らせるだけです。グループ企業に派遣する“もっぱら派遣”について新たにルールを設け、八割(労働時間換算)まで認めるとしています。労働組合などはせめて五割以下に規制するよう求めています。
特定・除外やめよ
期間の定めのない派遣労働者について、派遣先が労働者を特定・選別することを認め、直接雇用の申し込み義務から除外します。
これらはいずれも、財界が派遣労働者を使い続けるために求めてきたものです。
厚労省は“雇用が安定しているから緩和しても問題ない”と説明しますが、差別を招くとして派遣法が禁じている違法行為を認める理由にはなりません。
直接雇用の申し込み義務の除外も、「臨時的・一時的な業務に限定し、常用雇用の代替としない」との労働者派遣の原則にそむく改悪であり、削除すべきです。
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