2008年11月6日(木)「しんぶん赤旗」
“目玉”の経済対策混迷
政府・与党
麻生太郎首相が総選挙に向けた“目玉”として打ち出した追加経済対策をめぐり、政府・与党が迷走しています。
「給付金」でドタバタも
「二兆円」規模、四人家族で「六万円」と打ち上げた定額給付金。麻生内閣の経済政策の“目玉”中の“目玉”です。ところが、それを全世帯とするのか、所得制限を設けるのかで大揺れです。
首相は同対策を発表した十月三十日の記者会見で、「全世帯について実施する。規模は二兆円」と約束していました。
ところが、与謝野馨経済財政担当相は「生活支援の名にふさわしい全世帯に給付するという意味」(二日のNHK番組)だと発言。所得が一千万円を上回るような世帯を支給対象から外すべきだとの考えを示しました。
同じ番組で公明党の山口那津男政調会長は、法改正が必要なことを示し、「それをやって年度内実施が遅れるというようなことにならないように」とクギを刺しました。
中川昭一財務・金融相も、「市町村の窓口で(給付を)実施するとなると手続きが難しい」(二日)と、難色を示していました。
このため、自民党の細田博之幹事長が「麻生総理ははっきり言われているわけで、閣内で調整してもらわないと」(四日)と立ち往生する事態に。
麻生首相は四日、記者団に「貧しいとか生活に困っているところに出すんであって、豊かなところに出す必要はない」と発言。記者団から「(対策発表会見では)全世帯といったが」と問い詰められると、麻生首相は「言葉尻をとらまえればそうですよ。具体策がないんだから、全世帯と言わなきゃダメだった」と開き直る始末。
自公両党は、週内にも所得制限案をとりまとめる方向ですが、“目玉”対策でさえ政府内でまともに検討されていないことを露呈しました。
消費税増で“援護射撃”
麻生首相が「給付金」と引き換えに「三年後の消費税引き上げ」を言明したことを受けて、与党幹部は勝手な解釈による“援護射撃”に躍起です。
公明党の山口政調会長も、「三年後に増税などといっていない。(首相は三十一日に)訂正したでしょう。もともと経済対策には三年後なんてどこにも書いていない」(一日)と述べ、まるで首相が増税そのものを否定したかのような解釈を示しました。
自民党の園田博之政調会長代理は、「経済対策をやってお金がかかったから三年後に消費税を負担してくださいというのとは全然異質の問題だ」(二日)と言い訳しています。
しかし、どう言い訳しても、今回の経済対策と消費税増税は、まさにセットの「対策」です。与党議員も、「『結局は、(給付金で)減税をしたあとに、怖い増税が待ち構えているんじゃないか』との批判めいた意見を頂くことが多い」(公明党の赤松正雄衆院議員の三日付ブログ)と愚痴をこぼしています。
公明党の太田昭宏代表が「三年間は消費税は上げないという方が強いメッセージではないか」(十月三十一日)と発言したことに対しても、赤松氏は「いささか苦しい」と批判しています。
「ばらまき一瞬、増税一生」(日本共産党の小池晃政策委員長)の定額給付金のボロは、政権の混迷をいっそう深めています。
(林信誠)