2008年11月6日(木)「しんぶん赤旗」

証券優遇で 10人に183億円減税って本当?


 〈問い〉駅前で「大金持ち10人に183億円の減税がされている」という演説を聞きました。本当ですか?(東京・一読者)

 〈答え〉2006年分の申告所得で100億円を超えた10人の大金持ちだけで、183億円の減税がおこなわれていた―。これは株式等譲渡益(株式の売買によって得た利益)に対する減税額のことで、国税庁の申告所得税標本調査(06年分)をもとに本紙が試算したものです。(10月27日付1面)

 株式等譲渡益の税率は、国税と地方税を合わせると本則20%のところ、08年末までは特例で10%に軽減されています。そのため、本来なら10人の大金持ちの納税額は約366億円となりますが、この特例によりその半分の納税で済んだのです。

 この調査を見ると、10人の大金持ちだけでなく、この優遇税制が一部の資産家に多大な恩恵を与えていることがわかります。

 株式等譲渡益にたいする06年分の減税額は総計で2320億円です。株式などの売買所得のあった人は総数で26万人。このうち申告所得の合計が1億円を超える人数は5019人(2%弱)ですが、この階層の減税総額は1420億円で、減税額の61%を占めます。

 申告所得の合計が高いほど優遇されるかたちで、10〜20億円の167人に183億円、20〜50億円の95人に221億円、50〜100億円の20人に116億円、100億円を超える10人には183億円の減税となっています。

 100億円を超える10人の一人当たり減税額はなんと18億3千万円にもなります。

 なぜ、こんな減税がまかりとおるのか。これは自公政権が02年まで本則26%だった株式等譲渡益の税率を03年から20%に、さらに03年〜07年までこれを半減(10%)し、07年度税制「改正」で期限をさらに1年延長したためです。

 金融危機対策を口実に、こうした証券優遇税制の延長が現在、検討されており、民主党も「現行証券優遇税制のうち、配当に対する軽減税率の延長を行う。譲渡益に対する軽減税率については、民主党税制改革大綱との整合性を調整のうえ、延長を検討する」(同党の「金融危機対応案」)としています。

 高額所得者に巨額の恩恵を与え、格差拡大に拍車をかける税制の見直しこそが必要です。(喜)

 〔2008・11・6(木)〕


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