2008年11月11日(火)「しんぶん赤旗」

介護困難

重い費用負担 実態・認定にズレ

民医連、728例発表

抜本改善を提言


 全日本民主医療機関連合会(全日本民医連、鈴木篤会長)は十日、現行の介護保険制度の欠陥で生活や介護が困難になっている事例を掘り起こし、抜本的な改善につなげようと、各地の医療・介護事業所で把握した七百二十八件の事例に関する報告書をまとめました。


 全日本民医連の山田智介護・福祉部長らが記者会見して発表したもので、「利用料をはじめとする重い費用負担や給付(介護サービス)を抑制する仕組みによって利用の手控えや取り止めが広がっている」と指摘。国に利用料の廃止や介護の必要度をみる認定制度の抜本的な見直しなどを求めました。

 対象となった事例は、全日本民医連加盟の三百三十四事業所(二十九都道府県)から寄せられたものです。

 報告書では「年収八十万円以下の高齢の夫妻で、夫(81)は寝たきり。介護保険料を納めているが、利用料負担ができず必要な介護サービスが使えない」「介護していた娘の病気が悪化し女性(84)の入所施設を探すが、月十万円以上の利用料は困難で、適当な施設が見つからない」「男性(70)は進行性の難病なのに、認定更新で要介護度が3から2に引き下げられた」など生々しい実態が紹介されています。

 報告書は、事例から明らかになった「利用者・家族が直面している困難」として、(1)重い費用負担のため、利用を断念もしくは手控えざるを得ない事態が広がっている(2)認知症の要介護者などで認定結果と本人の状態が著しくかい離する傾向が強まっている(3)要介護度に応じて決められたサービスの支給限度額の範囲では十分なサービスを受けられない―など九点を指摘。「利用者の介護・生活実態と介護保険制度の運用に対する真摯(しんし)な検証と、それに基づいた制度全般にわたる総合的な見直しを行うことが必要だ」と主張しています。

 記者会見で、山田部長らは、地域の介護基盤の危機的な現状にも触れ、介護保険に対する国の負担分を50%に引き上げて、利用者負担につながらない形で介護報酬の体系・水準を抜本的に見直すべきだと話しました。


 介護保険制度 2000年4月にスタート。05年6月の国会で、自民・公明与党と民主党の賛成で改悪が強行されました。低所得者や介護の必要度の高い人ほど自己負担が重くなる仕組みはそのままに、(1)「軽度」者向けに「新予防給付」をつくり、訪問介護などの利用を制限する(2)介護施設の食費・居住費を全額自己負担にし、一人当たり年約40万円の負担増を強いる―ことなどが新たに盛り込まれました。日本共産党は「国庫(負担)の支出削減を目的に給付の削減と国民負担増ばかり押しつける法案」(小池晃参院議員)と改悪に反対しました。



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