2008年11月11日(火)「しんぶん赤旗」
侵略戦争肯定を主張
「つくる会」幹部招く
自衛隊幕僚学校 田母神氏新設の講座
幹部自衛官を教育する自衛隊統合幕僚学校(東京都目黒区)で、侵略戦争美化の歴史教科書づくりをすすめる「新しい歴史教科書をつくる会」の福地惇副会長(当時は理事)が講義していたことが十日、分かりました。
福地氏は本紙の取材に「いまは(田母神問題の)渦中にあり、答えられない」とのべ、否定しませんでした。
同学校は侵略戦争肯定の懸賞論文を発表した田母神俊雄前航空自衛隊幕僚長が校長を務めたことがあります。
福地氏は、文部省主任教科書調査官でした。一九九八年に教科書検定基準の「近隣諸国条項」を批判し、更迭されました。講義は二〇〇六年四月十七日で、統合幕僚学校一般課程の「歴史・国家観」講座。テーマは「昭和の戦争について」。「つくる会」の西尾幹二前名誉会長のホームページに掲載された講義案によると、「満州事変・満州建国は日本の侵略ではない」とするなど田母神氏の懸賞論文とほぼ共通しています。
「歴史・国家観」講座は田母神氏が学校長のときに、新設されました。同氏は航空自衛隊内誌の「鵬友」(〇四年三月号)で「今年の一般課程から『国家観・歴史観』」という項目を設け、五単位ほど我が国の歴史と伝統に対する理解を深めさせるための講義を計画した。主として部外から講師をお迎えして実施してもらっている」と記述しています。
防衛省は本紙の問い合わせに、講師陣については、大学教授、作家などの肩書のみで講師名は公表しませんでした。
俵義文「子どもと教科書全国ネット21」事務局長は「自衛隊内での侵略戦争肯定の歴史教育は『戦争する日本』を担う自衛隊幹部や隊員にそうした歴史観をもたせるためではないか。明らかに憲法違反であり、許されるものではない」と批判します。
新しい歴史教科書をつくる会 侵略戦争を賛美する立場にたった教科書を学校の授業で使用させることをめざして1996年12月につくられた組織。この「つくる会」が主導した歴史教科書(扶桑社刊)が2001年に検定合格。国内外からきびしい批判があがりました。同会は同教科書の採択をめざしましたが、国民的な反対運動が広がり、採択はごく一部にとどまりました。
統合幕僚学校 東京都目黒区の陸上自衛隊目黒駐屯地にある幹部自衛官の教育研究機関。陸海空各自衛隊の将補や1佐、2佐クラスが「学生」で、高級幕僚業務、自衛隊統合運用、安全保障学などを通常10カ月で履修します。将官や上級幕僚になるための「登竜門」とされています。
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