2008年11月12日(水)「しんぶん赤旗」

論戦ハイライト

侵略美化 組織ぐるみ

前空幕長招致 井上議員の追及

参院外防委


 日本共産党の井上哲士議員の参院外交防衛委員会(十一日)の追及は、田母神俊雄前空幕長が個人的に「論文」を発表しただけでなく、侵略戦争美化、憲法破壊の特異な見解を職務権限を使って徹底していたという、自衛隊の組織的・構造的な問題を浮き彫りにしました。


職務権限使い教育

写真

(写真)質問する井上哲士議員、右奥は田母神前空幕長=11日、参院外交防衛委

 田母神氏は、懸賞論文の中で「我が国が侵略国家だったというのは濡衣(ぬれぎぬ)だ」と主張するとともに、「集団的自衛権も行使出来ない」などと、現憲法を非難しています。

 井上氏が指摘したのは、論文執筆以前から、田母神氏がこうした暴論を、空幕長として全国の基地で講話などの形で繰り返していた問題です。

 浜田靖一防衛相は「講話は部外者に対して広報目的に実施する。訓話は、上級者が部内のものに対して教えを諭すために実施することが多い」と説明しました。

 そこで井上氏が示したのは、田母神氏が一月三十日に空自熊谷基地(埼玉県)で行った「我が愛すべき祖国日本」と題した講話です。「専守防衛」について「これからもずっと正しいのか、検討されなければいけない」と主張し、かつての戦争で中国に軍隊を送ったのも「決して侵略のためではない」などと述べていました。

写真

(写真)3月19日の准曹士先任集合訓練で田母神空幕長が訓話したと報じる4月3日付「朝雲」紙

 井上氏に対し田母神氏は「しゃべった内容は(懸賞)論文といっしょだ」と述べ、講話の事実を認めました。

 このほかにも、自衛隊準機関紙「朝雲」(四月三日付)によると、空自の准曹士先任集合訓練の場で同氏は「東京裁判やいわゆる南京大虐殺にも触れながら戦後教育の危うさや自虐史観を指摘」した訓話を行っています。

 井上 任務として幹部を集め、職務権限として「教えを諭す」―つまり空幕長として教育している。自衛隊の外で公にしたら更迭される内容を、職務権限として自衛官に教え込んでいる。重大だと思わないのか。

 防衛相 重大なことだという認識のもとに今回、お辞めをいただいた。

 浜田防衛相も、その異常さを認めざるをえませんでした。

 田母神氏は、熊谷基地での講話で「われわれ(自衛隊)が外に向かって意見を言っていかなければならない」「問題はなんぼ起こしてもいいから頑張ってください」とまで述べています。井上氏は「まさに、けしかけているものだ」と批判し、田母神氏がこれまで、どんな講話・訓話を行ってきたのか、全容を明らかにせよと求めました。

 浜田防衛相は「検討させていただきたい」と答弁しました。

「靖国」派が講師に

 つぎに井上氏が暴露したのは、陸海空の自衛隊幹部教育を行う統合幕僚学校でも、田母神氏が学校長を務めた時に、「歴史観・国家観」という講義が新設されたことです。井上氏の指摘に田母神氏は、「日本を悪い国だと言ったのでは、自衛隊の士気も崩れる。きちっとした国家観・歴史観を持たさなければ、国は守れない」と、自身が主導したことを認めました。

写真

(写真)自衛隊の統合幕僚学校の幹部教育カリキュラム。「東京裁判史観」「大東亜戦争史観」などが並んでいる

 そこで井上氏が示したのが、そのカリキュラムの内容に関する防衛省資料です。

 同資料によると、「教育目標」は「健全な歴史観・国家観を育成」することで、「主要教育内容」の中には「東京裁判史観」や「大東亜戦争史観」などが挙げられています。

 こうした呼び方自体が、侵略戦争を否定する歴史観の中で使われる特異なものです。

 井上 こういう内容の歴史観、国家観教育が適切だと考えているのか。

 防衛相 カリキュラムの中身について私も把握していない。中身を見て、確認したい。

 井上氏は「幹部教育の場で何が行われているのか防衛相が把握していないというのは重大だ」と批判しました。

 さらに井上氏は、二〇〇六年の「歴史観・国家観」の講義で講師を務めたのが、侵略戦争を美化する「新しい歴史教科書をつくる会」の福地惇副会長だと指摘しました。

 防衛省は、資料の中で講師の名前を黒塗りにし、明らかにしていませんが、「靖国」派の西尾幹二・電気通信大学名誉教授のホームページで、福地氏が講義内容を明らかにしています。そこでは「講義の目的」について「『昭和の戦争』は…『自存自衛』のための止む終えない(ママ)受身の戦争だった」とし、「それが了解出来れば、現憲法体制は論理的に廃絶しなくてはならない虚偽の体制であると断言できることを論ずること」だと述べています。

 井上 驚くべき内容だ。特異な歴史観・国家観を自衛隊幹部全体に職務として教え込むものだ。重大だと思わないのか。

 防衛相 この場で答えるのは差し控えたい。

 これだけ明らかになっても重大性を認められない政府・防衛省の異常さがはっきりしました。

歴代政権に重大責任

 井上氏は、田母神氏を任命した安倍内閣が、「靖国」派が多数を占めていたことなども挙げ、同氏が、その特異な考え方を公然といえる雰囲気や土壌をつくってきた歴代政府の責任の重大性を指摘。「歴史観・国家観」にかんする幹部教育の講師名、その全容の公開を強く求めました。

 浜田防衛相は「時間をいただきたい」と答弁。井上氏は、こうした自衛隊を引き続きインド洋に派兵し続けていいのかが厳しく問われているとし、「いっそうの徹底究明が必要だ。(新テロ特措法延長案の)採決は論外だ」と強調しました。



■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp