2008年11月12日(水)「しんぶん赤旗」
陸自元曹長が告発
憲法無視 暴走怖い
海外派兵 機に管理強化
前空幕長問題
田母神俊雄航空自衛隊幕僚長(当時)による侵略戦争肯定の懸賞論文執筆問題で、元自衛隊員からも驚きと不安の声が上がっています。
陸上自衛隊の元曹長(55)は、「目にあまる。黙っていられない」と憤慨します。「これは一種の言論クーデターだ。こんなことがいつかおきるのでは、と思っていた矢先だった」と言います。
更迭、定年退職で幕引きを図る防衛省の対応にも納得がいかない、としてこう指摘します。「文民統制上の明白な違反であり懲戒処分は避けられない。それを懲戒審理もせずに退職ですませるやり方は明らかに臭いものにはフタの構えだ」
「尾行しろ」と
一般隊員は上級の許可もなく外部に文書を発表するなど考えられないし、ちょっとしたことでも警務隊や調査隊に拘束され徹底的に背後関係を調べられる、といいます。
元曹長にはこんな体験があります。職場で学生時代の同窓生と電話のやりとりを何度かしたときです。「同僚に『お前、大丈夫か』と言われ、なんでと聞き返すと『上官から、あいつ思想関係があるのか調べろ、尾行しろと指示されたから』と」
元曹長は「四、五年前から自衛隊は歯止めのない暴走がはじまっていると感じてきた」といいます。四、五年前といえば、アメリカのアフガン、イラクへの先制攻撃戦争にあわせて、自衛隊が創設いらい初めて海外に、重武装部隊の派兵に向けて動いた時期です。
元曹長は「インド洋、イラク派兵をきっかけに第一線部隊に隊員が集められ、人手不足の後方部門でもやれ対テロ訓練だとか任務はふえるばかり。管理もきつくなり、階級をかさにいばりちらす幹部が幅をきかせ、いじめやパワハラ・セクハラがひどくなり、自殺も増え始めた」と告発します。
事実上の動員
昨年の参議院選挙のときのことです。「自民党から立候補したヒゲの隊長、イラク派遣隊長の『講話』を聞くようにと、課業中の昼間から講堂に集められた。事実上の選挙動員だ。昔は一応自由参加だったが、このときは出欠をとった。東条英機の孫の女性の『講話』も聞かされた、そのときは靖国神社のビデオも見せられた。憲法なんて関係ねえ、という空気だ」。侵略戦争肯定、憲法無視は、空自だけではない、といいます。
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