2008年11月13日(木)「しんぶん赤旗」
金融危機 英国では
倒産4千社 解雇30万人
労組 「政府は雇用・中小企業対策を」
【ロンドン=岡崎衆史】「日々の注文が25%も落ちている」「(仕入れにきて)実際に空の財布をみせる者もいる」―。十月末、ロンドン市内で開かれた意見交換の場で、箱作りの老舗メーカーを経営するデービッド・ウォーターマンさんがブラウン首相に窮状を訴えました。英国でも金融危機が実体経済に波及し、中小企業を中心とする企業活動や庶民生活に重大な影響を与えつつあります。
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九月までの三カ月間で倒産した企業は四千一社に上り、六月までの三カ月に比べて10・5%増、前年同時期からは26・3%も増えた―。英独立行政法人が今月、危機による雇用悪化を明らかにしました。民間の「アラート研究所」も、過去三カ月で金融、不動産、建設業界を中心に三十万人以上が解雇されたと発表しています。
英産業連盟(CBI)のランバート事務局長は、(1)住宅バブルの崩壊(2)国家と国民の借金の多さ(3)産業全体に占める金融部門の割合の大きさ―を挙げ、「(英国は)より被害を受けやすい」と警鐘を鳴らしました。
英国は新自由主義を導入したサッチャー政権が一九八六年、金融証券制度の自由化を実施。規制の弱い金融部門が拡大し、危機の影響を受けやすい経済構造が生み出されました。米サブプライム危機の影響もいち早く受け、今年二月には、中堅銀行ノーザンロックが国有化されました。
製造業も金融危機で打撃を受けています。国立統計局によると製造業の生産高は九月まで七カ月連続で低下。一九八〇年十二月以来の長期的落ち込みでした。
住宅バブル崩壊も庶民生活に影を落としています。住宅金融大手のハリファックスは、十月の平均住宅価格指数が昨年同月よりも14・9%下落したと発表。四月―六月(第二・四半期)の担保差し押さえも昨年同時期より71%も上昇し、一万一千五十四人が家を失いました。
金融危機が発生すると英政府は、金融機関への公的資金注入を他に先駆けて行い、国際的な金融改革に向けても指導性を発揮しました。しかし、中小企業や雇用などへの抜本的な支援は後回しにされてきました。
労働組合会議(TUC)バーバー書記長は、「政府が銀行救済のための異例の努力をしているのを見て、有権者は同じ努力を自らの雇用についても政府に期待している」と指摘。失業者支援、雇用増のために職業訓練、解雇の際の補償金の増額、金融依存の転換、富裕層に負担を求める公平な税制などの実施を求めました。
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