2008年11月17日(月)「しんぶん赤旗」
主張
G20金融サミット
規制強化と改革は避けられぬ
世界の二十カ国・地域(G20)首脳が会したワシントンでの金融サミットが、米国発の金融危機への対策と危機の再発を防ぐ措置について協議しました。
銀行など金融市場参加者が高い利益を求めてリスクを軽視してきたことが危機につながったと分析し、金融への規制強化に合意しました。投機の抑制につながり、マネーの暴走がもたらした「カジノ資本主義」の害悪を認めたものです。
投機規制への道
あり余るマネーが血眼で行き先を探し、金融だけでなく原油や穀物など人びとの生存にかかわる商品まで投機の餌食になりました。異常な価格高騰で、途上国では食料を求める人びとの暴動が起き、先進国でも国民を生活苦が襲っています。マネーの暴走は金融危機を引き起こし、中小企業の倒産と失業増など経済の悪化が世界的に進んでいます。
サミットの「宣言」は、「すべての金融市場、商品、参加者が適切に規制され、監督の対象となる」と指摘しています。サブプライム(低信用層向け)ローンを組み込んだ「毒入り」証券に太鼓判を押した格付け会社、危険を覆い隠すオフバランスなどの会計手法、小さな借り入れで大きなもうけを生み出すレバレッジ手法、巨額の役員報酬などへの規制や検討が課題になります。投機をあおる要因にメスを入れようとするもので、迅速な実施が求められます。
サミットの成果は、金融機関の活動を市場原理に委ねるとする米国流「新自由主義」の破たんが明らかになり、方向転換が避けられなくなったことの表れです。昨年のハイリゲンダム(ドイツ)や今年の北海道での主要国(G8)サミットでは、欧州諸国が規制の強化を求めたにもかかわらず、米国や日本の反対で実りませんでした。
今回の金融サミットでも、欧州諸国がより強い規制を打ち出したのに対し、米国は「自由市場原理」を掲げて抵抗しました。対立は「宣言」にも反映されています。ヘッジファンドについて、ファンドが「私的」との理由で規制策を打ち出すにいたりませんでした。
それでも、全体として踏み込んだ規制策を示すことに、米国も反対できませんでした。経済危機への対処の枠組みが、中国やインド、ブラジルなどの新興国が発言権をもつG20へと様変わりしたことが反映しています。
国際通貨基金(IMF)や世界銀行は大国中心で途上国の発言権を保障せず、米国流の規制緩和と金融自由化を各国に押し付けてきました。米国発の金融危機はその改革を不可欠にしています。
途上国がIMFなどにより大きな発言権を持つことが確認されたことは、これら国際金融機関の改革につながるものです。
合意は来年三月末までの緊急措置と今後の検討課題も示しており、改革の加速が求められます。
転換迫られる日本
日本は当面の対策には関心を寄せていますが、改革には後ろ向きです。それでも麻生首相が、米国側に立って規制に反対してきた従来の姿勢の修正を迫られたことは明らかです。
新自由主義的な政策が立ち行かなくなったことを直視し、政府は「カジノ資本主義」への追随を抜本的に転換すべきです。
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