2008年11月29日(土)「しんぶん赤旗」
主張
空自イラク撤収
あらゆる戦争支援やめよ
政府は二十八日、イラクで米軍を支援している航空自衛隊の撤収を決めました。浜田靖一防衛相の撤収命令を受けて、空自は来月下旬にすべて帰国します。
政府はイラクの治安が「改善した」ことを撤収理由にしていますが、無法な戦争支援に反対する日本国民の声が日増しに大きくなるとともに、国際社会、とりわけイラクとアメリカの国民が米軍・多国籍軍撤退の要求を強めていることが背景になっているのは否定できません。イラク戦争支援の誤りは明白です。政府は無法な戦争支援をいっさいやめるべきです。
米一国覇権主義の孤立
政府は少し前まで、空自の「任務を継続する」(七月二十九日、石破茂防衛相=当時)といっていました。しかし、米軍・多国籍軍への撤退要求が強まるとともに、外国軍のイラク駐留を根拠づけた国連安保理決議が十二月で終了することが確定的になり、アメリカがイラクと取り決めた米軍駐留のための地位協定も自衛隊の駐留継続の根拠にならないため、撤収に追い込まれました。
そもそも「イラク戦争」は、世界の圧倒的多数が開戦に反対していたのに、フセイン政権が大量破壊兵器をもっているとうそをいってアメリカが強行した国連憲章違反の先制攻撃戦争です。大義も道理もない無法な戦争に、NATO(北大西洋条約機構)加盟国を含む世界の多くの国が戦争協力を拒否してきたのは当然です。戦争放棄の憲法を踏みにじっていち早く開戦を支持し、イラクから軍隊を撤収させる国が相次ぐなかで最後まで戦争支援を続けた日本政府の態度は、まったく道理が立たず、文字通り醜悪のきわみです。
米軍は無法な戦争で何十万人ものイラク国民の命を奪い、何百万人という難民をつくりだしました。戦争のため人道復興事業も遅れ、イラク国民はいまもって苦しんでいます。米軍の蛮行に怒りをつのらせ、イラク国民の圧倒的多数が米軍・多国籍軍の撤退を強く求めているのは、当たり前です。
この米軍の非人道的な無差別殺りくを支えているのが日本の戦争支援です。空自の米兵・軍事物資の空輸支援は、米軍の戦闘力を補充し、無差別攻撃の継続につながっています。無差別殺りくに手を貸したことに目をつぶるわけにはいきません。
名古屋高裁が自衛隊のイラク派兵差し止め訴訟で、米軍への空自の空輸支援が憲法にもイラク特措法にも違反するとの判決(確定判決)を言い渡したことも撤収への力となりました。侵略戦争を美化する論文で更迭された田母神俊雄前空幕長が「そんなの関係ねえ」と言い放ったように、判決を無視し、撤収を拒否してきた政府は、その態度がきびしく問われます。
インド洋からも撤収を
政府はイラクから空自を撤収させる一方で、アフガニスタン「報復戦争」支援の拡大を狙っています。臨時国会を延長してまで、新テロ法延長法案を強行成立させようとしているのはその一歩です。戦争支援の拡大をめざせば、アメリカが求めるアフガン本土へのヘリ部隊派遣や戦費負担にも道を開くことになるのは、明らかです。
イラクから空自を撤退させるだけでなく、あらゆる戦争支援をやめ、政治的・平和的解決のために力をつくすことこそ重要です。
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