2008年12月1日(月)「しんぶん赤旗」
NHK「日曜討論」での
市田書記局長の発言
日本共産党の市田忠義書記局長が三十日のNHK「日曜討論」で行った発言は次の通りです。
冒頭、第二次補正予算案の通常国会への提出をめぐって議論があり、市田氏は次のように述べました。
国民の暮らし考えない二次補正
市田 三万人の非正規社員が首を切られ、派遣労働者は寮からも追い出されて路頭に迷っている人が大量に街にあふれている。帝国データバンクの調査でも、中小企業の三社に一社が年末の資金繰りに頭を痛めています。(麻生太郎首相と小沢一郎民主党代表との)党首討論は四十五分間もあったが、暮らしや経済がそれだけ大変なときに、そういう中身の議論はほとんど行われずに、第二次補正(予算案)を出すか、解散かという政局論的な議論に終始しました。みていた国民は、果たしてこれでいいのかと憤りを感じたんじゃないかと思うんです。
問題は中身です。第一次補正に私たちは反対をしました。第二次補正の問題でいうと、十月三十日に麻生首相が自ら記者会見で、追加経済対策が必要だと、これでは年も越せないとおっしゃった。ところがその中身たるや、相変わらずの大企業、大資産家優遇策が中心で、景気悪化から暮らしを応援する中身がなく、唯一の“目玉”といわれた給付金も、「究極の選挙対策のバラマキ」だといわれています。本当にお金がほしいと思っている人でも、三年後の消費税増税(予約)付きです。こんなやり方はひどいというので、第二次補正は出そうにも出せなかったというのが実態ではないでしょうか。真剣に国民の暮らしを考えていない表れだと思いました。
新金融機能強化法案―銀行への公的資金投入
新金融機能強化法案をめぐり、民主党の鳩山由紀夫幹事長が「いたずらに(参院での採決を)引き延ばしをするつもりはまったくない」と発言したのにたいし、市田氏は次のように述べました。
市田 共産党としては、これは反対です。理由は二つ。一つは、“いかさまばくち”のようなカジノ資本主義が破たんをし、そういう資産運用で失敗した銀行に公的資金を投入するというものです。しかも当初の二兆円が十兆円に膨れ上がりました。これは大銀行にも公的資金を投入するものです。ところが、三大メガバンクだけでも、この一年半で中小企業への貸し付けは五兆円も減らしています。
アメリカでは、公的資金を投入しても、損失が出た場合には銀行業界の責任で返せということになっていますが、これ(同法案)は、損失が出ても税金で負担するというものです。十年前に四十六兆円の公的資金を投入しましたが、そのうち十兆円は国民負担になっているわけです。
(二つ目に)貸し渋り、貸しはがしを防止するというのであれば、メガバンクに対し、きちんと中小企業への貸し付け目標を明確にさせるべきです。それへの監督・指導をもっと厳しくすることを抜きに、公的資金を投入するというのは、モラルハザード(自己規律の破壊)を呼び起こすし、中小企業対策にもならないので、この法案に私たちは反対です。
公明党の北側一雄幹事長は、同法案について、「貸し手側から中小企業支援をしっかりできるような環境、条件をつくることが狙いだ」などと発言。市田氏は、「体力ある大銀行にも投入するんでしょう」と疑問を投げかけました。
追い詰められ解散もできない麻生政権
自民党の細田博之幹事長が、世界中が大恐慌に陥るかもしれない時期に総選挙などできないという主張を展開したのに対し、市田氏は次のように述べました。
市田 三代続けて国民の信を得ていない内閣は異常であり、私は国民の信を問うべきだと思います。ただ、その際、やはりきちんと国民の前に争点を鮮明にして、暮らしや雇用、社会保障、農業、中小企業をどうするのかということ(についての議論)をやったうえで、解散・総選挙をやるべきです。
麻生内閣も、総裁選挙後のご祝儀相場(世論調査の支持率)がよければ、冒頭解散をやりたかったと思いますが、支持率が高くなかった。それで、政局より経済、景気(が大事)だといって追加経済対策を打ち出した。しかし、いわゆる「定額給付金」などで迷走しました。そこへ失言、暴言です。「たらたら飲んで、食べて、何もしない人の分の金(医療費)を何で私が払うんだ」と。これは失言ではなく、本音を赤裸々に語ったのだと思います。これは漢字の読み違いとは性格が違い、医療保険制度のあり方の根本をまったく理解していない(ことを示しています)。そういう状況のもとでは解散できない、にっちもさっちもいかないところに追い込まれているのが、いまの自公政権です。
何でもOKで解散“請い願う”民主党
民主党の態度についても、次のように述べました。
市田 民主党も、とにかく解散さえしてくれるのであれば何でもOKですと、第一次補正予算に賛成しました。後期高齢者医療制度の存続を前提にした予算ですよ。それから、新テロ特措法延長案は、衆議院で一日の審議、一時間の審議でも結構だと、衆議院通過促進に事実上手を貸しました。論戦とたたかいで解散に追い込むべきで、請い願って、頭を下げて、とにかく解散してくれれば何でも賛成だというやりかたも、政局的で党略的だと思います。
指摘に対し鳩山氏は、「選挙をやってくれるのであるならば、(新)金融機能強化法(案)は、しっかりと処理します」と表明。「麻生首相が選挙をしたいという環境を、むしろこちらでつくってしまえば選挙をやらざるを得ないところまで追い込まれる」などと述べました。
雇用問題で政治に三つの責任
司会者は、非正規労働者の三万人以上の失業や有効求人倍率の九カ月連続下落などの厳しい状況に、政治の責任として具体的にどう対応するのかとただしました。
これに対し与党側は、雇用対策は来年以降の課題に先送りする発言を繰り返しました。市田氏は次のように主張しました。
市田 政治の責任には三つあります。一つは、やはり大企業に対し、遠慮なく社会的責任をきちんと果たせと、政府が強力な指導・監督を行うことです。
二つ目には、実際に失業した人の生活と雇用をきちんと保障することです。たとえば雇用保険の積立金が六兆円ありますが、これを非正規雇用労働者にも適用できるようにするとか、かつては(失業保険加入)六カ月だった失業保険の受給資格がその後一年に改悪されましたが、それを元の六カ月に戻すことや、自己都合の退職でも三百六十日の上限まで雇用保険を支給するようにすべきです。あるいは、派遣会社の寮を追い出されて住居がなくなるような人への緊急の住宅資金(支給)や、生活保障(給付)などに、積立金が六兆円もあるわけですから、それをきちんと使うべきです。
それから、(三つ目には)派遣法の抜本改正なども(必要です)。
私は、大企業に体力はあると思うんです。いま、従業員を削減しなければつぶれるような大企業はありません。ため込みが二百三十兆円もある。首切りの先頭に立っているトヨタは、減収減益というが、今年の利益の見込みは六千億です。なのに、トヨタグループ(全体)で七千八百人も首を切るという。あの奥田前会長は、“経営者よ、首切りするなら切腹せよ”とまで言った。(企業には)働いている人の雇用を守る責任があると思います。
しかもこういう状態を起こしたのはね、一九九九年の労働者派遣法の改悪です。それまでは、一時的、臨時的業務に限定されていた派遣労働を、企業側の要望に応じて(改悪しました)。率直にいわせてもらいますが、当時私は(参院)労働委員会に所属していましたが、自民党、公明党だけでなく、民主党、社民党も、“働き方の多様性、ニーズに応える必要がある”“若者の労働の価値観が変わっている”と(主張して)、原則自由化された。このことが、非正規雇用労働者を働いている人(全体)の三分の一にまで広げたわけです。そういう政治の責任からいっても、きちんと対策を取るべきです。
内需拡大へ雇用守ることが一番の問題
司会者が、「雇用問題の背景にある経済のあり方や仕組みはどうあるべきかを見直す議論をすべきでは」と提起したのに対し、市田氏は次のように答えました。
市田 こういう雇用の破壊が日本経済に与えた影響というのは、やはり大きなものがあります。ある研究機関の試算では、希望する非正社員を正社員化し、サービス残業を根絶して、有給休暇を完全に消化するだけで、国内生産が二十四・三兆円も増えるというんです。輸出大企業頼みではだめで、内需拡大をというのは、各党が全部いっています。しかし、内需拡大という点で一番の問題は、やはり雇用をきちんと守るということです。経済効果という点からも、いまの派遣切りだとか、期間社員の雇い止めなどのひどい状況をなくして、労働法制の規制緩和から規制強化へと転換すべきです。もうけているときにはコスト削減のために(非正規労働者を)こき使い、不況のときにはいつでも追い出すというやり方です。“ばくち経済”のツケを、何の責任もない働いている人に負わせるやり方は、本当に間違っていると思います。大企業が社会的責任を果たすのと同時に、日本経済の今後のまともな発展という点からみても、雇用問題は非常に大事だし、政治がいまきちんと責任を果たすべきです。
道路特定財源の一般財源化についての議論で、市田氏は次のように述べました。
市田 生活道路の補修などは必要ですが、高速道路を際限なくつくりつづけることは、やはりやめるということをはっきりさせるべきです。
交付税か交付金かという議論ですが、一般財源化だけを決めて、無駄な高速道路をつくり続けるのをやめるという議論を真剣に行ってこなかったことが、迷走の原因になっています。