2008年12月6日(土)「しんぶん赤旗」
大企業による大量解雇問題
志位委員長 麻生首相 党首会談
志位氏の記者会見から
日本共産党の志位和夫委員長が、5日の麻生太郎首相との党首会談後に、記者団に問われ、答えた内容は次の通りです。
政治の責任で実効ある措置を
|
――麻生総理への申し入れの内容を教えてください。
志位 申し入れの内容の全体については、昨日(四日)に(政府に)お渡ししています。
雇用と中小企業という二つの分野で年が越せないという深刻な実態が広がっておりますので、その全体に対する対応を求めました。
ただ、きょうは時間が制約されていたこともありましたので、私の方からは、とくに“派遣切り”“期間工切り”といわれている事態について、政治の責任で実効ある措置をとってやめさせることを強く求めました。
とくにいま、私たちの方にもたくさんの訴えが寄せられていますが、“解雇と同時に寮を追い出され、路頭に放り出され、命が危なくなる”“文字通り年を越せない”という事態がたくさん全国で起こっています。
政府は、(非正規労働者の解雇者数について)三万人という数字を出していますが、それにとどまらない、はるかに大きな規模で、非常に深刻な実態が起こっているということを、私の方から話しました。
そして、「ぜひ、これは、大企業と経済団体に対して、政府としての強力な指導と監督によって、是正をしてほしい。すみやかに“派遣切り”をやめさせてほしい」ということを要求しました。
総理からは、十二月一日に日本経団連の首脳陣と会合した際に、そういう問題について、「雇用の維持ということを申し上げた、とくに内定取り消しというのはとんでもないということを申し上げた」という話でした。
それから、総理からは「いま、企業のなかで、非正規雇用を切らないで、むしろ正社員を増やして、正社員に置きかえることで、逆にまともな道を開こうとしている企業もある。そういう道を企業は探るべきだ」という発言もありました。
私の方からは、「総理が要請されたのは、十二月一日ですが、数日後には大分キヤノンが大量の請負・派遣労働者の首切りの計画を打ち出している。(首相が)要請した当人、(日本経団連会長の)御手洗冨士夫氏が会長をつとめるキヤノンが、そういうことをやっている。だから、やはり、『要請』では足りない。いま大企業がやろうとしていることは、雇用のルール違反だ。『整理解雇の四要件』という、当然、非正規雇用労働者にも適用されるべきルールが守られていない。これは、政府として、民間の問題だからという態度でなく、厳しい指導と監督によってやめさせなくてはならない」と重ねて要求しました。
それについて総理からは「承りました。分かりました」ということで終わりましたが、官房長官の方からは「深刻な実態についての認識は共有しています」という話もありました。
引き続きこの問題は、政府に求めていきたいと思いますし、直接、大企業に対して、私たちも足を運んで、“派遣切り”“期間工切り”ということをやめさせるということは、本当に緊急の課題ですから、取り組んでいきたいと思っています。
正社員化の努力は企業にとっても重要
――申し入れに対する麻生総理の反応について、前向きな方向にいきそうな雰囲気は感じたか。
志位 やはり、はっきりと「政府の責任として指導・監督をやる」という明りょうな言明はなかったですね。「承った」というところで終わっているところですから、引き続き、私たちの国会内外でのたたかいが重要だと思っています。
ただ総理としても、いまの“派遣切り”“期間工切り”は、このままではまずいという認識はお持ちのようでした。やはり、こういう状況のもとで、派遣や期間工を切ってしまうのではなく、むしろ正社員化していくことのほうが、企業にとってもプラスになることをきょうは強調されていましたが、これは私たちと共有できる認識だと考えております。
きょうも、テレビでやっていましたが、トヨタの下請けで、これまで派遣に頼るやり方をやっていたら、不良品がどんどん増えてしまったと、そこで派遣を減らして、正社員に置きかえるということを取り組んでいる企業も紹介されていました。
本来、企業にとっても、こういう時期にどんどん派遣を切ってしまうやり方をするのではなく、雇用を守っていくこと、正社員化をすすめていくことが、その企業の未来にもつながる――そういう認識で対応すべきだと思うんです。こういう認識については、総理も否定できない。
ただ、実際にとる手だてが問題です。実効ある監督と指導を行って、実際に“派遣切り”“期間工切り”をやめさせななければならない。このことを重ねて強くいっておきたいと思います。
国政の重要問題で適宜に党首会談を
――今回、麻生総理が会談を受けた背景について、何があると思うか。
志位 ともかく、きょう、こういう形で私たちが申し入れをして、党首会談が行われたということは良かったと思います。
どの党であれ、公党が、自民、民主だけでなく、国会を構成しているすべての党と総理大臣が、緊急の問題、大きな問題について意見を交換するというのは、当然の姿であって、ぜひこういう意見交換、要請の活動を今後も適宜やっていきたいと思います。
そして会談が実現した背景には、“派遣切り”“期間工切り”が、非常に深刻な社会問題になっている。この認識については、だれも否定することができないという実態もあるのではないかと思います。
労働者の団結した反撃が始まった
――昨日、日比谷野外音楽堂での集会の感想があれば、お聞かせください。
志位 私も参加者の話を聞きまして胸がいっぱいになりました。
ある方が、「私に二〇〇九年を迎えさせてほしい」ということをおっしゃっていました。年内に解雇通告を受けている方です。本当に文字通り、来年が迎えられるかどうか、生きていられるかどうかわからないという実態が、切々と訴えられました。
同時に、集会に参加して心強かったのは、そういうなかで、労働者のみなさんが組合をつくって立ち上がっているということです。
たとえば、いすゞでは、千四百人の派遣労働者・期間労働者の全員の首切りを強行しようとしているわけですが、それに反対して、非正規の方々が労働組合を立ち上げて、違法解雇撤回、正社員化を求めてたたかいに立ち上がっている。つまり、労働者の側から反撃が始まったという報告が集会でなされました。いすゞで組合をつくったばかりの代表の方は、短い発言でしたが、万雷の拍手が起こりました。
やはり労働者のみなさんが、こういう苦境に絶対に屈しないで、みずから労働組合をつくって立ち上がるというのは、本当に重要な動きです。そういう社会的反撃がいま強く求められていると思います。
■関連キーワード