2008年12月8日(月)「しんぶん赤旗」

“解雇に異議申し立てず”

承諾書同意求める

製造派遣大手「アウトソーシング」

「労働紛争防ぐ」と全国で配布


 製造業向け人材派遣大手のアウトソーシング(本社・静岡市)が、解雇にあたって異議申し立てしないとする承諾書を派遣労働者に配布し署名を求めていたことが七日、分かりました。相次ぐ企業の「派遣切り」を助けるもので、派遣会社側は「承諾書は労働紛争を避ける手段で全国的に行っている」と説明しています。


 承諾書は、「○日付通知を受けた、以下の理由(派遣先の契約解除)に基づく(派遣会社からの)解雇について承諾します」「本件解雇につき、貴社(アウトソーシング)に対し、何ら異議申し立てを行いません」との文面に同意させ、派遣労働者本人の署名となつ印を求めています。

 アウトソーシングによると、この承諾書は全国の営業所で書式を統一して使用。記入は「あくまで本人の自由意思に基づく」としています。

 十一月には自動車部品を製造するさいたま市内の工場で、工場側からの契約打ち切りをうけて派遣社員約六十人に解雇を予告するとともに、承諾書の提出を求めました。「派遣切り」をすすめるアウトソーシングの地方営業所の担当者は、承諾書があれば労働者は権利の主張が困難になり「ドタバタ(労働紛争)を防ぐことができる」と説明します。

 解雇を予告され、承諾書の提出を求められた派遣社員の男性は「署名しなければ次の派遣先を紹介してもらえないなど不利益を受けるのではないかとプレッシャーを感じる」と訴えます。

 アウトソーシング本社の広報担当者は「派遣社員の方にプレッシャーを感じさせたならおわびしたい。派遣先から契約打ち切りされた方には現在、誠意をもって他の派遣先を紹介しようと努力している。文書のあり方は今後、社内で議論していきたい」と話しています。


派遣社員の弱さ利用

 労働者の権利に詳しい岸松江弁護士の話 派遣元は派遣先から契約解除されてもただちに派遣社員を解雇することはできず、次の派遣先を探す義務があります。承諾書は、派遣社員の不安定な地位による立場の弱さを利用して署名させることで派遣元が義務をまぬがれようとするもので許されません。



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