2008年12月10日(水)「しんぶん赤旗」
音楽家も労働者
実演家が国際シンポ開く
新国立劇場合唱団のオペラ歌手の解雇事件をめぐり、音楽家の社会的地位や権利、労働者性などについて議論する国際シンポジウムが九日、東京・新宿区で開かれました。主催は国際音楽家連盟(FIM)と国際俳優連盟(FIA)。
同合唱団員だったオペラ歌手の八重樫節子さん(59)は、二〇〇三年に劇場から契約を更新されず、解雇されました。八重樫さんは劇場の決めた日程、指示に従って公演やけいこに参加して賃金を得ていた労働者であり、このことは中央労働委員会も認めました。しかし、今年七月、東京地裁は契約の形式論だけで八重樫さんを労働者ではないとする判決を出しました。
実演家労働者の労働者性についてベノワ・マシューFIM事務局長は、フランスやアイルランドの例にふれ、「音楽家も労働力を提供して報酬をもらうなら当然労働者だ。八重樫さんのケースは労働者にあてはまる」と強調。川口美貴・関西大学大学院教授も、「八重樫さんは劇場に歌唱技能という労務を提供し、報酬を得ており、独立した事業者でもない。憲法二八条や労働組合法上の労働者だ」とのべました。
ジョン・F・スミスFIM議長は、「組合が個々の労働者を代表することで労働者の権利が確保される」と、実演家労働者の団結権の重要性を強調。古川景一弁護士は、東京地裁判決について「団結権、組合の存在を否定し、労働者を一人裸で放り出すものだ」とのべました。
ドミニク・リキエルFIA事務局長は、「ユニオンは、今回の事件を機会に、もっと多くの実演家に団結をよびかけるべきだ。そうしなければこの職業の未来はない」とのべました。
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