2008年12月11日(木)「しんぶん赤旗」
「非正規切り」防止へ
厚労省通達・パンフの要点
派遣社員や期間社員など非正規雇用労働者を中心にした解雇、雇い止め問題について、厚生労働省が九日発表した労働基準局長通達、職業安定局長通達とパンフレット『厳しい経済情勢下での労務管理のポイント』の要点を紹介します。なお全文は十一日から厚生労働省のホームページで見ることができます。
労働基準局長通達
解雇や雇い止め、労働条件の切り下げ等については、労働基準法等で定める法定労働条件を順守することはもとより、労働契約法や裁判例等に照らして不適切な取り扱いが行われることがないよう、事業主等に対し、新たに作製するパンフレット等を活用し、集団指導や窓口における相談、届け出受理時など各種機会を利用して、労働契約法や裁判例等の周知をはかり、適切な労務管理の必要について啓発指導を行う。
とくに、この啓発指導にあたっては解雇や雇い止めにかかる紛争をできる限り防止する観点から、関係法令や「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準(二〇〇三年厚生労働省告示第357号)」を順守するよう指導するとともに、事前に労使間での話し合いや労働者への説明を十分に行うことが重要である旨を説明する。
職業安定局長通達
▽すべての都道府県労働局に、早急に緊急雇用対策本部を設置。
▽雇用対策法に基づく再就職援助計画、大量雇用変動届については、非正規労働者も要件に該当する場合は提出の義務があることを周知徹底。
▽住居喪失者の支援
◇事業主に対し、離職者も一定の期間入居できるよう配慮を要請
◇住居喪失者の希望に応じた求人開拓。広範囲の地域にわたる求職活動を行う必要がある場合、移転費や広域求職活動費を周知。
◇社員寮等の退去を余儀なくされた住居喪失者等に対し、緊急避難的に雇用促進住宅への入居あっせんを実施。
▽採用内定取り消しを行おうとする事業主への指導および採用内定を取り消された学生等への就職支援
厳しい経済情勢下での労務管理のポイント
解雇については、労働者の生活に大きな打撃を及ぼすものであることから、雇用調整を行わざるを得ない場合であっても、労働契約法の規定を踏まえ、また、関係する裁判例をも参考に、解雇以外に方法がないか慎重に検討を行っていただくことが望まれます。
〈解雇・雇い止め〉
■解雇の効力
▽期間の定めのない労働契約の場合
権利の乱用にあたる解雇は労働契約法の規定により無効となります。
〔法令〕客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は、権利を乱用したものとして無効となります。(労働契約法一六条)
▽有期労働契約(期間の定めのある労働契約)の場合
やむをえない事由がある場合でなければ、契約期間中に解雇することはできません。期間の定めのない労働契約の場合よりも、解雇の有効性は厳しく判断されます。
〔法令〕有期労働契約についてはやむをえない事由がある場合でなければ契約期間が満了するまでの間において、解雇することはできません。(労働契約法一七条)
■整理解雇
整理解雇も客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合には、権利の乱用として、労働契約法により、無効となります。
また、これまでの裁判例を参考にすれば、労働組合との協議や労働者への説明を行うとともに、次のことについて慎重に検討を行っていただくことが望まれます。
◇人員削減を行う必要性 ◇できる限り解雇を回避するための措置を尽くすこと ◇解雇対象者の選定基準が客観的・合理的であること■有期労働契約の雇い止め
有期労働契約については、使用者が講ずべき措置について「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」が定められています。
裁判例によれば、契約の形式が有期労働契約であっても、期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態に至っている契約である場合や、反復更新の実態、契約締結時の経緯等から雇用継続への合理的期待が認められる場合は、解雇に関する法理の類推適用等がされる場合があります。
〔裁判例〕期間の満了ごとに当然更新を重ねてあたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で労働契約が存在していたといわなければならない場合、雇い止めの意思表示は実質において解雇の意思表示にあたり、雇い止めの効力の判断にあたっては、解雇に関する法理を類推すべきである(最高裁第一小法廷 一九七四年七月二十二日判決)
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