2008年12月20日(土)「しんぶん赤旗」

貿易では飢餓減らず

国連報告官 WTO農業協定を批判


 国連の「食料への権利」特別報告官のデシュッター氏は十七日、国連人権理事会に提出する報告書で、国際貿易では飢餓状態にある人たちに食料供給はできなかったと指摘、発展途上国は新しい通商協定を交渉するよりも食料増産能力を高める努力を行うべきだと主張しました。

 報告書は、世界貿易機関(WTO)への調査団とさまざまな関係者との協議を経てまとめられたもので、二〇〇九年三月に開かれる人権理事会の会合に提出されます。

 同氏は、現行のWTOの農業協定は食料に関する人権を尊重するのではなく、食料を他の商品と同じように扱っていると批判。この結果、飢餓人口が二〇〇五年の八億五千二百万人から今日の九億六千三百万人に増加したと述べました。

 同氏は「貿易は各国の国民への食料供給能力の構築に代わることはできない」と述べ、「国際貿易をあてにして、持続可能な方法で食料安全保障を達成することはできない」と強調しました。

 さらに、多くの国の農業は国際競争に耐えるようにはなっていないと述べ、これは富裕国が貿易のための補助金を出して、食料を世界市場でダンピングしているからだけではなく、多くの途上国での農業部門への投資が不足していたためだと指摘しました。

 飢餓人口九億六千三百万人の半数が途上国の小規模農民であり、飢餓人口の80%が食料生産農民で、残りが土地のない農業労働者、牧畜民や漁民だと指摘しました。


 食料への権利 一九四八年十二月十日の第三回国連総会で採択された世界人権宣言の「生活水準についての権利」をふまえ、一九九六年十一月の世界食料サミットで再確認された権利です。だれもが安全で栄養のある食料を手に入れる権利、十分な食料を得る権利、だれもが飢餓から解放される権利などを意味し、基本的人権の一つと位置づけられています。


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