2008年12月20日(土)「しんぶん赤旗」
解雇→交渉38日、解決金
「これで温かい正月」
派遣大手の元社員
請負事業の縮小などを理由に、人材派遣会社から全員解雇を通告された労働者が三十八日間会社と交渉し、解雇撤回はならなかったものの、このほど三千二百七十万円の解決金を勝ち取りました。(小林信治)
この労働者たちは、人材派遣大手「サーミット工業」(本社・兵庫県尼崎市、従業員四千人)で働く正社員や期間社員です。同社が請け負っていた日産系自動車部品製造会社「ジヤトコ」京都工場の組立ラインで働いていた四十五人が十月末、解雇されました。
次々と組合に
突然の解雇通告とたたかったのはこの請負職場につくられていた労働組合、「全造船機械三菱重工支部」です。解雇を通告された労働者が次々に組合に加入してたたかい、二十九人にまで広がりました。
三年半前、組合員となった男性(31)は「とりあえずあったかい正月を迎えることができそう。みんな、ゆっくりと仕事を探せるだけの額がもらえた」と安どします。
一人当たりにすると、勤続年数に応じて六十四万円から二百三十万円。さらに有休の残日数分も生産功労金として支払われ総額二百七十万円を手にしました。
会社の寮に入居している人は来年一月末まで住むことができ、敷金代わりに家賃の半分を負担すればその後も可能です。解雇直前には健康診断も実施させました。
野村政勝書記次長(68)は「みんな非正規で働いてきて何回も首を切られた人も多く、解雇撤回なんて要求してもいいんですかという声も出ましたが、これは合理性がなく不当解雇、当然なんやと怒りを一つにしていった」と話します。
派遣会社は、毎月百数十万円の赤字を請負撤退の理由に上げましたが、組合は作業改善の具体案も出して「再建できる」と訴えました。
会社を追い詰めていた矢先に日産自動車大幅減産を受けたジヤトコの大幅減産計画が明らかになりました。
川嵜(かわさき)辰己委員長(62)は「解雇撤回の一歩手前まで派遣会社を追い詰めていた。それだけに」と残念がります。
団結したから
このなかでの解決金の実現です。組合員の男性(44)は「みんなが団結してスジを通したから会社はどうしようもなかった」と喜びます。
派遣会社「サーミット」は請負現場だけでなく、一月末までに「ジヤトコ」工場などで契約を打ち切られ、百八十人の派遣切りを進めています。組合は新たに解雇通告を受けた八人の派遣労働者とともに、九日発表された厚生労働省通達を力に団体交渉をかさねています。