2008年12月24日(水)「しんぶん赤旗」
主張
道路特定財源
「生活者財源」はどこに行った
麻生内閣と自民党、公明党が、来年度予算案の編成に当たって取りまとめたガソリン税など道路特定財源の「一般財源化」は、まったくの骨抜きに終わりました。
その象徴が、国の道路特定財源から地方に配分してきた「地方道路整備臨時交付金」の廃止にともなって新設する、一兆円の「地域活力基盤創造交付金」です。
新たな交付金は、七千億円の旧交付金に三千億円も上乗せし、政府・与党の合意で「道路を中心に」使うと使途を限定しました。
何も変わっていない
麻生太郎首相は当初、新交付金を「使途が限定されない交付税にしたい」と言っていましたが、口先だけにすぎませんでした。
来年度予算の財務省原案では、一兆円のうち八千億円を道路整備に、千四百億円は道路関連の公共事業などに使うとしています。国民が強く求めている社会保障の財源には、わずか六百億円を回すにとどまりました。
財務省のまとめによると、来年度のガソリン税など、これまでの道路特定財源に当たる税収が三兆一千四百十六億円です。これに対して財務省原案の段階で、道路整備費や高速料金引き下げなど「道路予算」は二兆七千五百七十八億円で、税収のほぼ九割が道路に費やされます。財務省の集計では道路予算に含めていない新交付金の「道路関連」千四百億円を加えると、旧「特定財源」の税収のほとんど全額が道路・道路関連予算となります。
一般財源化は名前だけで、実態は何も変わっていません。
道路特定財源とガソリン税の廃止が焦点になった今春、当時の福田康夫首相は道路特定財源を「生活者の目線」で見直すとして、次のようにのべていました。「『道路特定財源』から脱却し、生活者である皆さんが求めている様々な対策に使うための、いわば『生活者財源』へと改革する決意です」
福田首相は「後期高齢者医療制度」の「見直し」で財源が必要になれば、道路財源から「捻出(ねんしゅつ)する」とまで語っています。
しかし予算案は、社会保障費の抑制を圧縮する財源手当ての大部分や「後期高齢者医療制度」の「見直し」に、特別会計の積立金、いわゆる「埋蔵金」を充てています。自公政府は、口を開けば「社会保障には安定財源が必要だ」と繰り返しています。それにもかかわらず、目の前の安定財源である道路特定財源からは「すずめの涙」ほどしか回さないで、一時しのぎの「埋蔵金」を財源にするというのです。
その狙いは明らかです。道路特定財源を実質的に温存するとともに、社会保障の財源を名目にした消費税増税を強行するためにほかなりません。道路特定財源を本格的に社会保障に回すことになれば、「社会保障の安定財源は消費税しかない」という自公政府の口実が崩れるからです。
国民を完全に欺いた
道路特定財源の一般財源化は小泉内閣以来、安倍内閣、福田内閣にも引き継がれた自公政権の公約です。社会保障を連続で改悪する一方、高速道路や大型道路は特定財源で造り続ける本末転倒の自公政治に国民の怒りが噴出し、ごまかし切れなくなったためです。
公約を何年も先送りしたあげく、国民を完全に欺いた自公政権を許すわけにはいきません。
■関連キーワード