2008年12月24日(水)「しんぶん赤旗」

介護度認定新システム

軽い判定が多発

東京のモデル事業


 厚生労働省が来年四月から全面実施を予定している介護保険の新しい介護度認定システムでは、現在のシステムよりも介護度が低く判定される事例が多発する恐れのあることがわかってきました。

 新システムでは、コンピューターによる一次判定のソフトが書き換えられています。判定に使われる情報は大幅に削減され、一次判定の結果を二次判定の認定審査会で変更することが難しいしくみに変えられています。

 厚生労働省は全市区町村の三万八百十七人を対象に新システムを検証するモデル事業を行いました。先月末に結果を公表し、トータルでみれば現行システムと新システムの判定結果に「大差はない」としていました。

 しかし一人ひとりの判定は大きく動いています。新システムの一次判定をみると、22・6%の人が重度に移っているものの19・8%の人が現行システムの判定より軽度に下げられました。ところが同省は、一人ひとりの介護度の変化を「分析していない」といいます。

 その一次判定をめぐり、個別の判定の変化を追跡した現場からは、深刻な事態が浮かび上がっています。

 東京都内のある自治体では、約百五十人を対象にモデル事業を行いました。

 一次判定の結果を比較すると、現行システムで「要介護1相当」と出た人の三割が、新システムで「要支援1」にまで落ちました。「要支援2」とされた人も四割近くいました。「要介護1相当」の七割近くが新システムで「要支援」と判定されたことになります。

 現行システムで「要介護5」と出た人についても、四割が「要介護4」と軽度に判定されました。

 介護保険制度では「要支援1・2」「要介護1―5」のどの介護度と認定されるかによって保険で受けられるサービス額の上限が決まります。軽度になるほど限度額が減り、「要支援」では施設を利用できないなどさまざまな制限まで課されます。「非該当」とされると介護保険のサービスを受けられません。

 これまで「要介護」と「要支援」の境目の人については、一次判定で「要介護1相当」とした後、認定審査会で一例ずつ吟味し、二次判定を「要介護1」か「要支援2」に分けてきました。

 新システムでは、いきなり一次判定で「要介護1」「要支援2」に分けられてしまいます。判定のための情報も削減されるなか、認定審査会での論議が薄まる恐れがあります。そのうえ一次判定が低く出る傾向があるということは、従来なら「要介護」だった人が機械的に「要支援」と認定される危険性が高くなることを意味します。

 認定が変われば介護利用者の生活は重大な影響を受けます。モデル事業の審査員を務めた医師は「国は審査の簡略化・機械化しか考えていない。結果として給付の抑制になる」と批判しています。(杉本恒如)


 要介護認定 介護保険では、サービスを受ける前に介護度の認定を受けます。市区町村の担当窓口に申請すると、訪問調査員の聞き取り調査と主治医の意見書にもとづいて、コンピューターによる1次判定と介護認定審査会による2次判定が行われます。審査会は保健・医療・福祉の専門家3人以上で構成します。



■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp