2008年12月25日(木)「しんぶん赤旗」
志位委員長、トヨタと初会談
大量解雇を中止・撤回し雇用を守る責任果たせ
日本共産党の志位和夫委員長は二十四日、トヨタ自動車の古橋衛専務、宮﨑直樹常務と党本部で会談し、トヨタ自動車とグループ企業がすすめている大量解雇の方針を中止・撤回し、大企業として雇用に対する責任を果たすよう求めました。これは志位委員長の申し入れにトヨタ側が党本部で会談したいと応じて実現したもの。大企業の幹部が党本部を訪れるのは初めてです。会談には党側から吉井英勝、佐々木憲昭の両衆院議員が同席しました。
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志位委員長は、冒頭、「期間・派遣労働者の大量解雇が深刻な社会問題になっているが、トヨタという日本を代表するリーディング・カンパニー(主導的企業)が大量解雇の引き金を引いた、その社会的責任はきわめて重大だと考えている」「株主への巨額の配当、巨額の内部留保を考えても大量解雇が避けられないとする合理的理由は考えられない。大量解雇を中止・撤回し、雇用にたいする社会的責任を果たすよう求める」とのべました。
そのうえで、四点にわたってトヨタ側の認識と見解をただしました。
「非正規切り」 人道に照らし許されない
第一は、「非正規切り」が人道に照らして許されないという問題です。
志位氏は、トヨタ自動車とその連結企業で九千八百五十人、トヨタ・グループ総計で一万千六十人の人員削減計画が進められていることを指摘。「雇い止め」された非正規社員が職を失うと同時に住居も失い、ホームレスに追い込まれている事態などを示し、「人道に照らして許されない。トヨタでは、期間従業員を景気の『調整弁』と位置づけているのか」とのべました。
古橋専務は、人道問題との指摘には「ある側面そうだと思う」とのべつつ、期間従業員の位置づけについては「従業員の一つの形態と考えている」とのべるにとどまりました。
契約中途の解雇 法令に違反
第二は、法令順守の問題です。志位氏は、期間・派遣労働者の契約中途での解雇は法令違反となり、たとえ契約満了の「雇い止め」であっても「雇用継続への合理的期待が認められる場合」などは、解雇と同じように扱われ、違法となると指摘。トヨタが「最長で二年十一カ月まで働ける」とうたう求人広告で期間従業員を募集・採用しながら、今回の人員削減でその多くが六カ月など短期で「雇い止め」としているのは「違法性がきわめて高い」と指摘しました。
宮﨑常務は「トヨタ本体では中途解約は行っていない。グループ企業、仕入れ先にも同じ姿勢でやってほしいといっている」と説明するとともに、契約満了の「雇い止め」については「やれることは可能なかぎりやっているつもり」とのべました。
大量解雇には合理的理由ない
第三は、大量解雇が避けられない合理的理由がないことです。
志位氏は、トヨタ自動車がこの八年間に、株主への中間配当を五倍に、内部留保を二倍近く増やしていることを指摘。「雇用維持のためには内部留保の0・2%、中間配当の八分の一を回すだけで足りる」とのべ、「この点でも大量解雇の合理的理由はない」と強調しました。
古橋専務は「配当は三月期決算をみて決める」「内部留保については、内部留保を取り崩してまで(期間従業員の雇用を維持することはない)というのが、経営判断だ。そこは価値判断の違いだと思う」とのべました。
志位氏が、「いま日本の経済界では、労働者の生活よりも、大株主への配当を優先させる傾向が顕著だと思う。こうした『株主至上主義』とでもいうべき風潮は、資本主義のあり方としても一つの堕落ではないか」とただしたのに対し、古橋専務は「アメリカ的株主優先は、あまりにもどうかなと思う」、「日本型経営とアメリカ型経営についていま議論されるべきだ」とのべました。
経済を悪循環に突き落とす
第四は、競い合って大量解雇をすすめれば日本経済を雇用破壊と景気悪化の悪循環に突き落とすことになるという問題です。
志位氏は、「日本経済を立て直すには外需依存から脱却し、内需に軸足を移すことが必要だ。大量解雇をすすめれば景気の底が抜けてしまう。それはトヨタにとっても自殺行為ではないか」とのべました。
古橋専務は「そういう論理もあるかもしれない」としながらも、「国内での需要がないので外に出た。需要が先か雇用が先かという議論だと思う」と語りました。
志位氏は、内需を低迷させたのは政治の責任とともに、大企業の企業行動に大きな問題があると指摘するとともに、豊田章一郎名誉会長が、終戦直後、経営危機のなかで雇用を維持するために事業を広げようとカマボコづくりの修業を行ったことにもふれて、「トヨタがその社会的責任を深く自覚して、大量解雇を中止・撤回するよう重ねて求める」とのべました。
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