2008年12月27日(土)「しんぶん赤旗」
おみくじ、どう考える?
〈問い〉 初詣でなどで、いつも、妻は、おみくじを引きます。私は「大吉がでればいいけど凶がでれば気分が悪い」ので引きません。いったい、こんな風習はいつからできたのでしょう。科学的精神から、どう考えるべきなのでしょう?(北海道・一読者)
〈答え〉 おみくじは占いの一種です。
地震、雷、洪水や干ばつ、病気などの災いの原因も、人間社会に起こるさまざまな困難の解決方法もわからなかった古代の人々は、判断を占いにもとめました。約1500年前に、中国から「易経」という占いを体系づけた書物が渡来して、今日に伝わっています。占い師を易者と呼ぶのは、この書物に由来します。「易経」では“霊”が重視されていますので、おもに寺社の僧侶や神職が占いを担いました。後に、占いをなりわいにする人ができました。
占いは迷信という文字どおり、迷ったときに信じる非合理なもので、占いに科学的な根拠がないことは、今日では常識になっています。おみくじを引く人々には、面白半分ということもあるでしょうが、そこには「気になる半分」もあります。こうして、迷信と知りつつ、くじに期待することになります。
占いに頼る背景には、科学的な知識や考え方の不十分さという問題もあります。科学は、なぜ、と考えることから発達しました。かつては霊魂や厄(厄介なもの)が原因とされていた自然災害や病気などは、科学的に解明されてきました。ところが、今の学校教育では暗記中心になりがちで、必ずしも自然や社会の仕組みがよくわかるようになっていません。もちろん、科学の発達は、新たな未知の領域の発見でもありますから、その未解明なところに占いなどが存続する余地はあるでしょう。
さらに、学校や労働現場が人間の尊厳を踏みにじるようになれば、健全な人間関係が傷つけられ、孤立感や不信感がひろがり、頼れるものは占いということにもなります。また、マスメディアが占いを次つぎに発信し、オカルト(神秘的なこと)ブームをつくりだしてきました。これは、霊感商法などがはびこる温床ともなり、不況、格差と貧困、劣悪な社会保障、環境破壊などの原因をおおいかくす役割を果たしています。
くじの結果にとらわれるのではなく、合理的なものの見方、判断力を身につけ、不安や恐怖にたいして改革者の立場でのぞむ、というのが科学的精神に立つ考え方です。
おみくじは寺社の収入源の一つで、凶とでたら木の枝に結んでくる、などの対処も用意されていますが、くじの結果に一喜一憂することはないでしょう。(平)
〈参考〉草野直樹『暦・占い・おまじない』かもがわ出版
〔2008・12・27(土)〕