2009年1月3日(土)「しんぶん赤旗」
主張
米一極破綻後の世界
平和の秩序づくりが大事だ
米ブッシュ政権が内外の批判に孤立を深める中、まもなく退陣します。国連憲章を踏みにじった大義のないイラク戦争での失敗と、それに続く米国発の底なし金融危機は、圧倒的な軍事力や経済力にものをいわせた米国の一国覇権主義が終わりに向かい始めていることを浮き彫りにしています。
世界は「米一極支配」の終わりを歓迎しつつ、あるべき世界像を探っています。戦争を未然に防ぐ「平和の国際秩序」づくりや、弱肉強食の新自由主義からの大転換をはかる壮大な事業に拍車がかかっています。
新たな世界像に向けて
一部には「米一極支配」の破(は)綻(たん)に戸惑い、不安定な無秩序化が進行するとみる向きもあります。米国の凋落(ちょうらく)と新興国の発展が新たな覇権の台頭を招き、「ブロック化」が進むと懸念する見方もあります。「無極化」や「多極化」という議論もこれらに通じます。
しかし、世界の主要な流れは、覇権主義に代えて、平和と繁栄をめざす国際的な共同を強める方向にあります。
金融危機を前に昨年十一月に開かれた二十カ国・地域によるG20金融サミットが、新自由主義的な規制緩和路線の転換を確認したこともその表れです。
地域的な共同を強化する努力も各地で進んでいます。
米国が押し付けた新自由主義からの転換を進めてきた中南米・カリブ海地域の各国は十二月、「二百年前の独立以来」(ブラジルのルラ大統領)という初の全域的な首脳会議を開きました。
米国は「裏庭」とみなすこの地域で絶え間ない干渉を重ねてきました。その歴史にたって、中南米諸国は米国を除いた自主的な共同を進め、二〇一〇年には「中南米・カリブ海諸国機構」を設立する計画です。
地域共同の実績をもつ地域でも、強化に向けた新たな展開がみられます。東南アジア諸国連合(ASEAN)は十二月にASEAN憲章を発効させました。一五年には地域共同体を発足させるべく具体的な行程を検討しています。
ASEAN憲章も中南米・カリブ海首脳会議の宣言も、主権の尊重、内政不干渉、領土の保全などの諸原則をうたい、国連憲章を平和の基礎として確認していることは重要です。超大国の干渉を排して、紛争を域内で平和的に解決しようとするものです。ASEANが域外諸国の加盟を進める東南アジア友好協力条約(TAC)も、紛争の平和解決をうたっています。
欧州連合(EU)が発効をめざしているリスボン条約も、国連憲章を基礎とするとしています。これらの地域的な共同は、軍事的、経済的な「ブロック」として互いに対立・敵対しあうのではなく、平和に貢献し、互恵にもとづく協力関係を発展させる意思を表明しているのです。
国際協力の拡大を
金融・経済危機の克服と貧困の削減、地球温暖化の阻止、核兵器の廃絶、テロの根絶など、世界は国際協力の強化を通じて解決すべき課題に直面しています。
それを妨げてきた「米一極支配」の破たんを迎えて、国際協力が一段と進むことが期待されています。オバマ次期米政権がどう対応しようとするのか、世界はそれを注視しています。
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