2009年1月8日(木)「しんぶん赤旗」

海自派兵へ新法案

海賊口実に 自公が協議で合意


 自民・公明両党は七日、政策責任者会議を開き、海賊対策を口実に東アフリカ・ソマリア沖へ海上自衛隊を派兵させる新法案を今国会中に提出するため協議することで合意しました。両党は近日中に、同問題を検討する作業チームの初会合を開き協議を進めます。

 ソマリア沖への海自艦船派遣をめぐっては、麻生太郎首相が昨年十二月二十六日、浜田靖一防衛相に、「検討作業の加速」を指示。政府は、派兵を急ぐため、自衛隊法八二条が規定する海上警備行動で対応することを明らかにしています。

 政府はそれと並行して、現行法では対応できない外国船舶の護衛を可能にさせ、公海上で海賊を取り締まる権限を自衛隊に与える新法を検討しています。作業チームの設置は、政府の動きを受けたもので、自衛隊法が定める海上警備行動と新法制定の両面で論議するものとみられます。


解説

派兵固執、問題解決に結びつかず

 新法制定まで含めたソマリア沖への海上自衛隊派兵の動きは、新テロ特措法に基づく海自のインド洋派兵に続けて、憲法違反の新たな自衛隊の海外派兵を何が何でもおし進めようとするものです。

 背景には、アフガニスタンでの「対テロ戦争」とも関連した米国への迎合や、海賊対策としてすでに周辺海域に艦船を派遣した中国への対抗意識があると指摘されています。

 この派兵の動きはさまざまな問題をはらんでいます。政府は新法までのつなぎとして、自衛隊法八二条が定める海上警備行動で対応する予定です。しかし、過去二回発令された海上警備行動は、いずれも日本周辺海域で実施され、遠く離れた海域を念頭に置いたものではありません。また、海自は警察権を持っていないため、海賊を拘束できません。さらに、警備の対象は日本の船舶および日本人が乗っている船舶に限られ、外国の船舶が海賊に襲われても対処できません。「国際協力」「国際協調」という大義名分が成り立たないのです。

 こうした、現行法における問題点を解消するための新法制定の動きですが、そもそも、海賊行為に軍事力で対処することが有効かという問題があります。ソマリアでは一九九一年のバーレ政権崩壊以後、二十年近く内戦が続いています。国家や経済が破たんした状態のなか、仕事を失った沿岸漁民が身代金目当てに海賊に転じているといわれます。

 海賊問題の解決には、周辺国への支援など日本として貢献する道はあります。中長期的には、ソマリア情勢の混乱という根本問題を解決する国際協力をしないまま自衛隊派兵だけに固執するのは、真の国際貢献とはいえません。(遠藤誠二)



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