2009年1月12日(月)「しんぶん赤旗」
党員増、雇用問題で注目
共産党はいま何を目指すのか
NHK党首インタビュー 志位委員長の発言
日本共産党の志位和夫委員長は十一日、NHK「日曜討論」に出演し、共産党員が増えている背景や、深刻化する雇用・経済危機への対応について質問に答えました。インタビュアーは影山日出夫NHK解説委員。
1年余で新規入党1万4千人
国民の苦しみに心を寄せ、連帯して打開していこうとする政治姿勢に共鳴が広がる
影山 おはようございます。
志位 おはようございます。
影山 政局の話の前に、今年の新年の(党)「旗びらき」で、共産党の党員が十二月だけで千人以上ですか、一昨年の九月から一万四千人増えたということを報告されていましたね。ちょっと驚いたんですが、若い人が多いんですか。
志位 若い方の比率がだいぶ高まっています。
影山 去年、プロレタリア文学の代表作といわれた『蟹工船』がブームになったということがありましたけれども、党員が増えたのはやはりそういう労働条件、雇用の現場のいろんな問題、そのへんが背景にあるとお考えになりますか。
志位 そうですね。やはり若い方々の働かせ方があまりにひどくなっている。派遣労働という人間をモノのように「使い捨て」にする労働がうんと広がってしまった。労働の規制緩和ということで、ひどくなりました。
そういうもとで、ワーキングプア(働く貧困層)といわれる、働いても働いても貧困から抜け出せない方々が一千万人を超えて広がる、こういう状況の中で、日本共産党がそういう方々の苦しみに心を寄せて、連帯して打開していこうと(している)。この政治姿勢に共鳴して、多くの方々が入党されているということで、たいへんうれしいことです。うんと流れを広げていきたいと思っています。
今日の雇用危機は「政治災害」
「高速首切り」を可能にする労働は、99年の派遣労働の原則自由化、04年の製造業への解禁がもたらした
影山 今回の雇用危機はアメリカ発の金融危機が引き金になったといわれていて、世界的な現象になっていますね。そういう中で、日本だけの問題、日本の政治の責任、これはどこまであるとご覧になっていますか。
志位 日本の政治の責任は非常に大きいと(思います)。「高速の首切り」を可能にするような労働にしてしまったわけですね。すなわち、派遣労働をとってみても、一九九九年に原則自由化する、二〇〇四年には製造業に解禁すると。これを続けてきた結果、景気がいいときは(正社員を)派遣に置き換えて大もうけをする、悪くなったら景気の「調整弁」として切り捨てる、本当に切り捨てが安易にできるような状況にしてしまったのは政治の責任ですね。
ですから私は「政治災害」だといっていますけれども、「政治災害」ならば、政治の責任でこれ以上の「派遣切り」はやめさせる、そして職を失った人に対する生活、住居、職業の保障は、これも政治の責任でしっかりやる。これが求められていると思います。
雇用を守る政治の責任を果たすとき
トヨタグループだけで内部留保は17・4兆円、ごく一部を取り崩せば雇用を守れる
影山 たしかに共産党がおっしゃっている派遣労働は全面禁止という主張、これはわかりやすいとは思うんですけれども、ただ企業が国際競争力を失ってつぶれてしまったら働く場所がなくなって元も子もないじゃないか、あるいはいま派遣という形で働いている人たち、これはどうするんだと、いろいろ反論があります。これはどう答えられますか。
志位 まず企業の問題についていいますと、例えば今度の「派遣切り」の引き金を引いたのはトヨタ(自動車)ですよ。トヨタとその関連グループだけで、内部留保が十七・四兆円あるわけですよね。この間、二倍に増えている。これは派遣や期間工に置き換えて、その人たちの血と涙と汗の上にため込んだお金ですよね。そのわずか0・2%を取り崩せば、雇用を守ることができるわけです。こういうことを企業に厳しく求めていくという政治の姿勢が、私は大事だと思いますね。
「非正規切り」防止の緊急立法と、派遣法の抜本改正を
いま派遣で働いている人の雇用を守ることと、「使い捨て」労働をなくしていくことを同時並行で
影山 いま派遣で働いている人たちの場を奪わないか、多様な働き方という考え方を否定しないか。これはどう考えますか。
志位 いま派遣で働いている方々の雇用を守りながら、いかにこの「使い捨て」労働をなくしていくかという、両にらみの対応が必要だと思うんですね。
私たちは、二つ必要だと思っているんですが、一つは、「派遣切り」、「期間工切り」を防止する特別措置、特別立法が必要だと考えています。特に、年末に向けてだいぶ「派遣切り」がひどかったんですけれども、年度末に向けて、今度は(影山「正社員まで行くかもしれませんね」)、正社員まで行くかもしれないし、それから派遣あるいは期間工については、契約期間満了での雇い止めがものすごい大きな規模で起こることが心配されるわけですね。
影山 二〇〇九年問題といわれていますね。
志位 そうです。ですから、このことを考えますと、やはり政治の責任でそういう「非正規切り」を抑える立法措置が必要、緊急措置が必要だと(思います)。
この措置をやりながら、同時並行で労働者派遣法の抜本改正に踏み込む。私たちは、派遣をすぐ全面禁止というわけにはいかないと思うんです。九九年の(原則)自由化前に戻すと。そして一番不安定といわれる登録型派遣といわれるものは原則禁止にする。それから違法行為があった場合は、派遣先の企業の責任で正社員にする。こういう抜本改正をやって、労働者保護法に変えていく。この両方を同時並行でやることが必要だと思っています。
大企業の健全な発展と国民生活向上の両立を
雇用破壊競争では企業にとっても先はない、大企業に社会的責任と負担を果たさせる
影山 先ほど大企業の対応に問題があるということをおっしゃっていましたけれども、「旗びらき」のあいさつでも、大企業に正面から立ち向かうということをおっしゃっていましたね。共産党としては、大企業と国民生活の両立をめざすのか、それとも、いまのような大企業が存在しない社会を究極的にはめざすんですか。
志位 これは、私たちは、まず資本主義の枠内で、大企業にその社会的な地位にふさわしい負担と責任を果たしてもらおうというのが当座の改革の目標なんですね。ですから、大企業が衰退していくことを望むわけではもちろんありません。大企業がきちんと社会的責任を果たしながら健全に発展していくことが当然必要だし、それを国民生活と両立させていくということを私たちは求めているわけですね。
今のあり方は、大企業がどんどんどんどん首を切る。一社で首を切ったら、自分の企業にとっては財務状況がよくなるかもしれない。しかしトヨタのような企業が真っ先に首を切って、それがドミノ倒しのように社会に広がったら、全部で首切りを始めたらですね、もう景気の底が抜けてしまって(影山「自分の首を絞める」)、結局自分の首を絞める。だからこれは企業にとっても先のない道でしょうと(言いたい)。
私は、日本経団連やトヨタの(幹部の)方々と会談をする機会があったんですけれども、これは企業にとっても先がない道ですよと。企業のことを中長期的に先のことを考えたって、内需をいまよくして国内で物が売れるようにして、そして企業の経営もよくしていくっていう道を探求すべきだということを申し上げました。
政権をとったら現下の情勢で何から手を打つか
雇用、社会保障、中小企業、農業を応援、外需頼みから内需主導へ、日本経済の体質を抜本改善
影山 当面の生活支援なんですけれども、共産党も給付金には反対だとおっしゃっていますが、もし共産党が仮に政権を取ったら、現下の情勢ではまず何から手を打たれますか。
志位 やっぱり経済の問題についていいますと、日本の経済があまりに外需頼み、つまり輸出頼みになっている。そして内需が冷え込んでいるという事態がありますね。これは「構造改革」ということで一部の輸出大企業のもうけだけを応援してきた結果です。ですから、ここをやはり外需頼みから内需主導の経済に日本経済の体質の抜本改善を図る必要がある。
具体的にはいくつかあるんですけれども、一つは、「派遣切り」をやめさせて安定した雇用を保障する。
二つ目は、社会保障の問題について、二千二百億円ずつ毎年削るってやり方をとってきたわけですけれども、この削減を拡充に切り替えて、介護でも年金でも医療でも安心できる社会保障をつくる。
三つ目は、中小企業の資金繰りと仕事、この両面での見通しが出てくるようにする。
それからもう一ついいますと、農産物の価格保障、所得補償をしっかりやって、農業の再生を図る。農業がしっかりしてこそ地域経済がよくなりますからね。
そういう内需をよくしながら、経済を立て直す。そのためにも経済政策の軸足を、大企業から家計に移すという大きな転換が必要だと思います。
共産党にできて民主党に絶対できないことは
大企業に正面からモノを言えるか言えないか、「自民か民主か」の枠には閉じ込めきれない大きな選択が問われる
影山 党勢が拡大しているといっても、選挙に向けて麻生政権への逆風が強まれば強まるほど結果的に民主党に票が流れる。そこはジレンマじゃないかと思うんですが、最後にひとつ、共産党にできて民主党政権には絶対できないこと、これをもし一つ挙げるとすればなんですか。
志位 大企業に正面からモノを言えるか、言えないかですね。
影山 いまの民主党にはできませんか。
志位 言えないと思います。私たちはこれは正面から相手が経団連であれトヨタであれキヤノンであれ、堂々とモノを言っていますけれども、民主党には言えない。
なぜかといいますとね、日本経団連から要求項目を突きつけられて、そして通信簿を付けてもらって、そして献金をあっせんしてもらっていますでしょ。やはり大企業から献金を受け取りながら大企業の横暴を正すことはできない。
ですからよく「自民か民主か」といわれますけれども、その枠にはもう閉じ込めきれない、もっと大きな選択が問われていると思います。
影山 どうもありがとうございました。