2009年1月17日(土)「しんぶん赤旗」
EUが出した派遣労働指令とは?
〈問い〉 欧州連合(EU)が昨年秋に派遣労働者の待遇を正規労働者と同一にする画期的な「指令」をだしたそうですが、どんなものですか?(東京・一読者)
〈答え〉 欧州議会は昨年10月22日、派遣労働者の待遇が派遣先企業の正規労働者と就労初日から平等でなければならないことを義務づけた欧州連合(EU)派遣労働指令案を可決しました。欧州連合の「指令」は共同体立法の一つで、指令が採択された場合、加盟国にはその目標を達成する義務が生じ国内法や国内規定を制定又は改正しなければならないことになっています。このため、EU加盟27カ国は、3年以内に同指令を国内法に適用することが求められています。
指令は全14カ条からなっています。主な内容は、(1)派遣労働の適用範囲を、労働者派遣企業を通じて使用者企業に派遣されるあらゆる派遣労働者と定め(第1条)、パートタイム、有期契約、契約雇用者、労働者派遣企業との雇用関係といった理由のみで指令の適用範囲から除外してはならないと抜け道をふさいでいること(第3条)(2)派遣の全期間を通じて同一の職務に就くために当該企業によって直接に採用された場合に適用されるものを下回ってはならないという均等待遇の原則を規定、妊娠中の女性・育児中の母親の保護・児童と若年者の保護、男女の平等待遇、あらゆる差別とのたたかいなどを明記したこと(第5条)―などです。
このほか、指令は、正規採用機会の情報を派遣労働者に伝える、共用施設(社員食堂、保育施設、通勤交通サービスなど)の利用において直接雇用と同一の権利を与える、加盟国政府は、派遣労働者が職業能力を高められるようにするために職業訓練および保育施設を利用できるよう措置する、派遣企業および派遣先企業の違反に対する罰則を制定する、などを定めています。
このように、指令は大きな前進ですが、指令には、各国レベルにまかせる例外規定ももりこまれ、これが平等待遇義務からの抜け道に利用される危険もあり、各国でのたたかいにゆだねられています。
EU域内の派遣労働者は約300万人とされています。EUでは、これとは別にパート労働の均等待遇に関する指令を1998年に成立させており、日本とは対照的なとりくみとして注目されます。(喜)
〔2009・1・17(土)〕