2009年1月18日(日)「しんぶん赤旗」

ソマリア沖派兵

麻生内閣 暴走

民間船撃沈も「正当防衛」


 何が何でもソマリア沖に派兵―。麻生太郎首相と自民・公明両党は現行自衛隊法を最大限拡大解釈し、「海賊対策」を口実とした海上自衛隊派兵へと暴走しています。


米新政権の軽視恐れる

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 与党の海賊対策に関するプロジェクトチーム(PT)は自衛隊法に定められた「海上警備行動」で行う措置を二十日に取りまとめ、早急な派兵を促す構えです。首相は十六日、「まとまったら(海上警備行動発令の指示を)すぐやる。事は急いでいる」と発言。今週中にも浜田靖一防衛相に派兵の準備命令を出させる考えです。

 防衛省ではソマリア派兵のための新法制定を先行すべきだとの考えが大勢ですが、首相はこれを一蹴(いっしゅう)しようとしています。

 その背景には、二十日のオバマ米新政権発足という事情があります。シーファー前駐日米大使は十四日、離日直前の講演で「新政権への日本の最初の反応は『ノー・ウィ・キャント(できません)』ではだめだ。海賊からのシーレーン防護もアフガニスタンへの部隊派遣も日本はできる」と発言。政府関係者に緊張が走りました。

 米同盟国に加え、中国などもソマリア沖に派兵しています。米新政権からの軽視を恐れ、派兵を「急いでいる」のです。

現行法を極限まで拡大

 そのため自公政権は、今国会中の成立が不透明な新法を待たずに、海上警備行動を極限まで拡大して本格的な活動に踏み切ろうとしています。

 海上警備行動はもともと日本周辺での活動を想定しており、保護の対象も日本人の生命・財産です。また、このような活動は第一義的に「海上保安庁の責務」(防衛省資料)であり、海自の役割は本来補完的なものです。

 ところが自公は海保の活用を最初から除外し、地理的制約もなしに「自衛隊が主役」の活動を推進しています。ただし、自衛官は海賊などの逮捕権限はないため、司法警察官である海上保安官を乗船させ、海保を補完的な存在に位置付けています。

 海上警備行動での保護対象も日本船籍や日本人などに加え、外国船籍に搭載された日本の積み荷まで対象にしようとしています。

武器使用要件拡大狙う

 自衛隊法上、「正当防衛・緊急避難」に限られている武器使用要件も大幅な拡大が狙われています。

 昨年十一月、インド海軍のフリゲート艦がオマーン沖で民間船舶を「海賊母船」と誤認。「相手側が撃ってきた」として撃沈し、乗組員一人が死亡、十四人が行方不明となりました。後にタイの企業が自社の漁船だったと名乗り出ましたが、与党PTの佐藤茂樹座長(公明党)は「(インド側は)正当防衛・緊急避難の手続きを踏んでいる」と述べ、容認する考えを示しました。

 派兵新法では、「正当防衛・緊急避難」の拡大に加え、相手側からの攻撃がなくとも「任務遂行」のための武器使用が検討されています。

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