2009年1月19日(月)「しんぶん赤旗」

ゆうPRESS

ボランティアの手記

見た 日本の現実

「年越し派遣村」東京・日比谷公園


 非情な「派遣切り」などで仕事と住まいを奪われた労働者を対象に年末・年始(昨年12月31日―1月5日)の6日間、東京・日比谷公園に開設された「年越し派遣村」。全国各地からやってきた労働者は約500人、直接支えたボランティアは1700人近くになりました。全国で募金活動も取り組まれました。「年越し派遣村」に、ボランティアとして駆けつけた3人の青年の手記を紹介します。


簡単に家失う恐ろしさ

千葉県の大学職員

島本歩美さん=仮名=(33)

 ボランティアに12月31日と1月1日の2日間参加しました。知人に誘われ、「家でじっとしているよりも誰かの役にたちたい」との思いで日比谷公園に向かいました。

 まずびっくりしたのはボランティアの数でした。新聞やテレビの報道を見て若者がたくさん集まってきていました。

 私は食事の準備を手伝いました。重ね着してカイロを身につけているのに昼間でも震えました。夜を過ごさなければならない人の身を思うと何とも言えない気分になりました。

 大きなバッグ一つぶらさげて言葉もなく、暗い表情をして列に並んでいる入村者の方がたはよっぽどおなかを減らしていたのか、「おいしかったよ。ありがとう」と深々と頭を下げていきました。簡単に家を失い、命の危険にさえさらされてしまうような社会は恐ろしいと感じました。

 派遣村には共産党の議員さんが多く訪れて、いつまでも残って声を聞いていました。一緒にいたボランティアは「こういうときは共産党だね」と話していました。労働者たちは、いざという時に本当に頼れる政党がどこなのか気づき始めていると思いました。

医療相談1日100人以上

東京・中野共立病院医師

西村りえさん(27)

 先輩医師がボランティアに参加したことを「しんぶん赤旗」で知り、4日、全日本民主医療機関連合会の青年医師や友人などに声をかけて、5人でボランティアに行きました。

 軽い気持ちで行ったのですが、1日で100人以上が医療相談に来て、4人は入院、5人は病院受診となりました。

 血圧が200以上ある方や糖尿病の治療を中断している方も珍しくありません。派遣村をめざして静岡や茨城から歩いてきてひどい靴ずれを起こしている方、ストレスのあまり突発性の健忘症を起こしている方もいました。

 当院に入院となった方は出血性胃かいようがあり、ひどい貧血で輸血をしました。

 もし入院していなかったら命を落としていたかもしれません。

 派遣村でお話を聞いた方は、ほとんどが無保険でした。これでは、薬も買えず、病院にもかかれません。

 貧困がある限り、人びとの健康は守れないと強く感じました。

 今年は選挙の年。共産党を伸ばして、政治を変えたいと思いました。

募金を数え手が震えた

京都・私立大学院生

大田祐子さん=仮名=(24)

 年末から年明けにかけて連日テレビや新聞で「派遣村」が報道されました。

 政治や社会の問題の結果としての「派遣村」を自分で見て、理解したいと思い、4日早朝、新幹線に飛び乗り、東京・日比谷をめざしました。

 私は4、5の2日間ボランティアに参加しました。

 労働者が置かれている社会的状況の厳しさを実感すると同時に、その状況を良くしようと集まる人びとの“つながりの強さ”も体感することができました。

 私は募金の勘定をするように言われました。2時間やって1人では100万円ぐらいしか数えられませんでした。

 ほかのボランティア仲間が手伝ってくれ、合計2400万円。数えながら、手が震えました。日本社会も捨てたものではないと。

 「派遣切り」にあい、食と寝る場所を求めて「派遣村」に来た男性は次の施設へ移動した際に連絡をくれました。「生活保護受給をして生活再建ができ、前向きに就職活動ができる状況にあるのはボランティアの方の協力の賜(たまもの)です」といいました。私は「こうして気にかけあう関係があることは何よりも財産ですね」と伝えました。

 「派遣村」を必要とする人がこれ以上増えないように政治・企業・市民のレベルで良い議論・施策・運動が展開することを期待しています。


お悩みHunter

商業高校へ進学したいのだが

  将来すぐに働けるように専門知識を身につけるため、商業高校への進学を希望しています。しかし両親や周りの人たちは、「商業高校に行っても今の時代、就職は厳しいから、大学進学を考え普通科にしたら」といいます。僕は大学には、今は行くつもりがないのですが…。(中学3年 男性)

目的持つことに意味がある

  中学3年生で将来の進路について考えているあなたに感心してしまいます。専門知識を身につけようという目的意識があれば充実した高校生活が送れるのではないでしょうか。ぜひ希望の高校へ行ってほしいと思います。

 ご両親が心配なさっているように、たしかに今の就職事情は大変厳しいです。おそらくこれから先も、しばらくは変わらないと思います。

 だからといって大卒だけが就職できて、商業高校は就職できないなんてことはないと思います。

 地域に根ざした中小企業は地元の商業高校から採用してくれます。そこであなたが身につけた知識も、きっと生かすことができると思います。

 でもあなたはこれからどんどん見識が広がっていろいろなことに挑戦したくなるでしょう。

 もし自分のやりたいことがほかに見つかって大学へ進学したいと思ったら、そのときは受験勉強をすればいいのです。目標を持って勉強すれば必ず合格できると思います。

 また、進路を変えたとしても、それまで身につけてきたことはいつか必ず何かの役に立ちます。目的意識を持って取り組んだことに意味のないものはありません。

 もうすぐ受験の日がやってきますが体調だけは気をつけて本番を迎えてください。

 合格できますように応援しています。


第41代日本ウエルター級チャンピオン 小林 秀一さん

 東京工業大学卒。家業の豆腐屋を継ぎながらボクシングでプロデビュー。99年新人王。03年第41代日本ウエルター級チャンピオン。



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