2009年1月29日(木)「しんぶん赤旗」
学生支援機構
奨学金取り立て強化へ
滞納者 ブラックリストに
学生に“同意しないと打ち切る”
日本学生支援機構(旧日本育英会)は、奨学金の取り立て強化の一環として、滞納者の情報を全国の金融機関でつくる個人信用情報機関に登録して不良債務者扱いする「ブラックリスト化」の準備を始めています。返還中の人に加え、奨学金を利用している現役学生にも、滞納時の情報機関登録の同意書を提出するよう求め、「同意しなければ奨学金を打ち切る」としています。
本来、教育を受ける権利を保障するための奨学金を民間のローンと同様のものに変質させるものです。京都では、学生五十人が「ブラックリスト化反対」を掲げてデモを行いました。
同機構の奨学金を利用する学生は全国で百二十二万人(二〇〇八年度)。信用情報機関は全国千四百の金融機関が会員で、ブラックリストは融資などの判断基準になるため、登録されればローンやクレジットカード利用が困難になります。
支援機構は、昨年十二月、三カ月以上の延滞者を登録すると発表。直後から大学等を通して、学生から同意書を集め始めました。
同機構は「同意しない人は、返還する意思があるのかあやしいのでお金を貸すわけにはいかない」としています。
「奨学金のブラックリスト化反対」「学費をタダに」を掲げてデモ行進を行った京都精華大四回生は(24)は「先輩は就職先もなく、失業者の増加や内定取り消しが社会問題になっています。本来なら返済を猶予したり、学費を下げるなど学生の救済が必要なときに取り立て強化でしめつけるのは逆です」と批判します。
京都府学生自治会連合の福田耕書記長(21)は「ぼくもやむを得ず同意書にサインしましたが、学生は卒業後に就職できるか不安が大きく、『(同意書を)書くのが怖い』と話します。母子家庭の友人は、学費をためるため、派遣会社で朝から深夜まで働き、体も心もボロボロになりました。借金型の奨学金は、困っている学生の命綱になっていない」と話します。
学生支援機構労働組合の岡村稔書記次長は「ある大学では、三月卒業の学生に対しても、同意しなければ学位を与えないか、一括返還をさせると脅しながら同意書を集めています。もともと学力と収入が奨学金貸与の基準だったのに、新たな条件を加えるのは、違法ではないかとの弁護士の指摘もある」と話します。
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