2009年1月29日(木)「しんぶん赤旗」

「ルールある雇用」の経済効果とは?


 〈問い〉派遣労働者を正規労働者にしたり、サービス残業をなくしたりするだけで内需拡大になると聞きましたが、どういうことですか。その効果は微々たるものと思えるのですが、違いますか?(東京・一読者)

 〈答え〉「アメリカ発の金融危機」が“外需・輸出頼み”の日本経済を直撃し、景気が悪化しています。そのなかで、これまで、金融・住宅バブルにわくアメリカ市場に進出して大もうけをつづけてきたトヨタやキヤノンなどの大企業が、不況を口実にして「派遣切り」「非正規切り」をすすめています。

 大企業の横暴を放置していては、日本経済は、雇用悪化と景気悪化という際限のない悪循環におちいることになります。

 この状況を打開するためには、日本経済の体質を外需・輸出頼みから内需主導に抜本的に切りかえていくことが必要です。

 非正規雇用の正社員化、サービス残業根絶、年休完全取得など雇用の安定と働くルールの厳守、つまり「ルールある雇用」を実現することは、日本経済を内需主導の方向に転換させていくうえで大きな役割を果たし、経済効果も抜群です。

 そのことを具体的に明らかにしたのが昨年10月に発表された労働総研の試算です。この試算では、(1)ワーキングプアの解消のため非正規の正社員化363万人を実現する、(2)サービス残業を根絶すると118・8万人の雇用が生まれる、(3)完全週休2日制と年次有給休暇の完全取得を保障すると153・5万人の新たな雇用が必要になる――という三つのケースを明らかにし、それによってどのような経済効果が生まれるかを算出しています。

 その結論は、労働者の賃金は21・3兆円増え、国内生産は24・3兆円増えるということです。その結果、日本のGDPは2・52%押し上げられます。日本の経済成長率は、景気拡大局面の時期で、04年度2・0%、05年度2・4%、06年度2・5%でしたから、それに匹敵する経済効果があることが明らかになりました。しかも、04〜06年度のGDPを押し上げたのは大企業の設備投資が中心でしたが、今回は労働者の懐を直接あたためることになるので、大企業だけでなく、中小企業にも経済効果が波及することになります。

 労働者の賃金支払いは21・3兆円増えることになりますが、大企業がため込んだ内部留保は、02年度の167兆円から07年度には228兆円に増えています。5年間で61兆円も積み増しているので、その3分の1をあてれば「ルールある雇用」を実現でき、経済効果も生まれます。(藤)

 〔2009・1・29(木)〕


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