2009年2月2日(月)「しんぶん赤旗」
NHK「日曜討論」での
市田書記局長の発言
日本共産党の市田忠義書記局長が一日、NHK「日曜討論」でおこなった発言は次の通りです。
番組では、麻生太郎首相が施政方針演説で掲げた景気回復策について、各党代表が討論しました。
自民党の細田博之幹事長は、現在の不況は「アメリカ発」のものであり、「国内の構造自体が大きな問題があるわけではない」と述べ、麻生政権の「回復策は必ず奏功して、景気回復に向かう」と語りました。
市田氏は、次のように述べました。
施政方針演説―暮らし守る防波堤壊した反省なし
市田 「安心と活力」と総理はおっしゃったんですけど、大変その言葉がうつろに響きました。今の経済危機の認識、その原因、打開の方向が空疎だと思うんです。
今、細田幹事長が、日本経済の構造には問題がなかった、とおっしゃったんですが、私はそうじゃないと思うんです。たしかにアメリカの経済危機の影響が大きいことは事実だと思うんですけど、そういう「津波」から国民の暮らしをまもる防波堤を壊してきたのはいったい誰なのか。それは小泉「構造改革」だったと思うんですね。「改革は成果だった」といって、それへの反省はなかった。
それから、内需拡大というなら、いまこれだけ深刻になっている「派遣社員切り」だとか、雇用問題の深刻な事態の打開をどうはかるのか、社会保障の拡充、農業、中小企業の支援をどうはかるのか―そういう問題の具体策はなかった。
外交問題でも新しい秩序ということをおっしゃったけれども、国連憲章に基づく平和の秩序という方向ではなくて、たとえばイラク戦争でも国際的に審判が下っているのに、いまだに「正しかった」という。あくまでアメリカのいいなりで、その方向を変えようとしないのは、重大な問題だと思います。
消費税―累計201兆円の一方で社会保障は切り捨て
麻生首相が“二〇一一年度からの消費税の引き上げ”にも言及していることに、公明党の北側一雄幹事長は、「まずは景気対策」とのべながら、「社会保障の維持、持続性、強化の観点でいずれ、この問題は避けて通れない」と発言。民主党の鳩山由紀夫幹事長は、「最低保障年金は、基本的に消費税でまかなう」同党の方針に触れ、将来的に「消費税の値上げをすればいい」と述べました。
市田氏は、つぎのように述べました。
市田 まだ消費税を上げることを明確にしたわけでないとおっしゃいましたけれど、いつからあげるか、パーセントをいくらにするのか、は別の法律で新たに定めるというのですけれども、二〇一一年度に消費税を上げるということを法律で決めるということは、明確にされたわけです。しかも国民の信を得ていないわけですね。
消費税導入のときも、3%から5%に上げるときも、今度も国民の審判を経ないで消費税を上げるということだけ決める。しかも、消費税というのは社会保障の拡充のために当然だとおっしゃったのだけれど、導入の際にも、税率を上げるときにもそういう口実だったんです。ちょうど消費税が導入されて二十年目を迎えるんだけれど、二百一兆円消費税とられているんですよ。ところが法人三税は百六十四兆減った。じゃあこの間、本当に社会保障は充実したのだろうか。年金は改悪される、サラリーマンの医療費窓口負担は増える、国民健康保険の保険料は、七千七百円から倍にふくれあがる、厚生年金の支給時期も六十歳から六十五歳となった。
社会保障のためといいながら社会保障が切り捨てられてきたというのがこれまでじゃないか。しかも、いま、「派遣切り」で毎日の暮らしすら困難な人まで増税にするというのが消費税であるわけで、所得の少ない人ほど負担が重くなる。
一方で、大企業や大資産家には減税をこの間やってきた。十年前とくらべたら、大企業、大資産家のまけてもらった税金は、年間ベースで七兆円ですよ。それはそのまま放置しておいて負担能力のない人からがっぽり取る。一番不公平な、社会保障に一番反する税金が消費税だというところが大事だと思います。
「渡り」―「天下り」の全面禁止こそ
官僚OBが、退職後に「天下り」を繰り返す「渡り」問題。昨年末に麻生政権は、政令で容認する立場を示していましたが、本会議での答弁で一転して「認めない」と表明。自民党の細田氏は、麻生首相が「本会議でやめよう、といっている。これで終わり」と述べ、問題は決着したとの見方を示しました。市田氏は次のように語りました。
市田 「やめる」というのなら、政令から削除するのを別に躊躇(ちゅうちょ)する必要はないわけです。「やめます」と総理がいったわけですから。私は「渡り」だけでなく、関連する民間企業や特殊法人に高級官僚が「天下り」することを全面的に禁止してこそ、問題の解決になると思います。
定数削減―ムダ削るなら政党助成金を
「渡り」と関連して議員定数削減の声が出ていることについて、市田氏は次のように述べました。
市田 みずから身を削るという議論と関連してひとこと言っておきたいのですが、最近、国会議員の定数を減らすという話があります。これは、国民と国会とのパイプを細くすればするほどいい、という考えです。民主主義に反するわけで、諸外国と比べても日本の国会議員は人口十万人当たり〇・五七人で、イギリス、イタリア、フランス、ドイツと比べても決して多くない。ムダを削る、身を削る、というのなら、政党助成金を削ることがなんでほかの党から出てこないのか、大変不思議だ。
雇用―派遣法の抜本改正を
雇用問題について司会者は、「非常に深刻な事態」として、厚生労働省が示した最新の数字でも、三月までに十二万四千人を超える人が職を失い、そのうち八万五千人が派遣労働者で、その99%が製造業への派遣であることを指摘。市田氏に、派遣労働の原則禁止を主張する共産党の立場を尋ねました。
市田 (派遣労働は)専門的、臨時的業務に限っていた一九九九年以前に戻すと。
司会 それで、正社員、直接雇用がほんとに増えるのですか。
市田 増えますね。これまで百の仕事を百人でやっていたとします。同じように百の仕事をしようと思えば、派遣を禁止したからといって企業は人を雇わなくなるか、というとそうはならない。今だったら、派遣社員であろうが、請負であろうが、誰を雇ってもいいという制度なので、安上がりの労働、いつでも首が切れる労働者をたくさん雇うのは決まっているわけで、やっぱりそこはきちんと禁止すると。
製造業への派遣を禁止するのは一歩前進だと思うんです。だったら、流通、物流とかサービス、そういうところの派遣はいいのか、と。やはり九九年以前の原則禁止に戻すべきで、やっぱりあそこで、原則自由化したことが今の「派遣村」のような現状をつくりだしたわけですから、根っこを絶たないとだめだと思います。
市田氏の発言に対し、公明党の北側氏は、「今の製造業の派遣労働をただ禁止というだけでは雇用に影響を与える」と反対を表明しました。
民主党の鳩山氏は、製造業で「派遣を入れたことは間違いだったと理解している」と述べ、製造業での禁止にむけて「野党で協力関係を強めていく必要がある」と述べました。
市田氏は次のように述べました。
市田 これ以上、新しい首切りをおこさせないためにも製造業への派遣はやめるべきだと思うんです。どうしてかというと、私たちも調べてみましたが、「派遣切り」に今後あいそうな人を見てみましたら、ほとんどが、同じ職場で同じ仕事を三年以上やっている人なんですよ。二〇〇五年、二〇〇六年に偽装請負が摘発されて社会問題になった。法令違反だから、本来はそのときに正社員にしておくべきだった人を、「適切な派遣」に切り替えなさいと厚生労働省は指導したんですよ。当時は、上限が一年だったのが二〇〇六年から派遣期限の上限が三年になった。その三年の期限がちょうど二〇〇九年、今年迎えるわけです。この方たちが大量に首を切られる。
現行法でも、三年を超えて働かせる場合には、派遣の受け入れ先のほうが“正社員になりますか”と申し入れなければならないとなっているわけです。現実に三年を超えて働かされている人が圧倒的なんですから、そういう人々に“正社員になる意思はありますか”と受け入れ先がいう義務がある。そういうふうにしていくことが新しい「派遣切り」を許さない一番の道だと思うんです。
今現に切られた人の救済と、新たな被害者をださない、それから派遣法の抜本的改正を同時並行で進めることが一番大事だと思います。
徹底審議のうえ解散・総選挙へ
最後に、予算成立と解散・総選挙の時期について、自民党の細田氏は、「二月の下旬までに」予算成立を目指したいとし、その後に「その成果で民意を問うという雰囲気が出てくる」と発言。市田氏は、次のように述べました。
市田 これだけ暮らしと経済が大変なときですから、外需だのみから内需中心に経済政策の軸足を移していく。家計をあたためることが大切です。徹底した審議をやって国民の前に争点を明らかにしていく。ただ、ずるずる延ばしはよくないと思うんですね。(首相が)三代にわたって、一度も国民の信を得てないわけですし、これだけ内閣の支持率が落ちているわけですからね。争点が明らかになりつつあるわけですから、徹底審議のうえ、解散・総選挙はできるだけ早く行うことが必要だと思っています。