2009年2月3日(火)「しんぶん赤旗」

市田書記局長の代表質問

参院本会議


 日本共産党の市田忠義書記局長が、二日の参院本会議でおこなった代表質問は次の通りです。


企業の一方的な都合で、労働者を路頭に迷わせる――人道上からも許されない

写真

(写真)代表質問する市田忠義書記局長=2日、参院本会議

 日本共産党を代表して麻生総理に質問いたします。

 今年二〇〇九年は「年越し派遣村」であけました。トヨタやキヤノンをはじめ日本を代表する大企業から、仕事だけではなく住む場所まで奪われ寒空の下に放り出された人たちを救おうという取り組みでした。いま全国各地に「派遣村」がつくられ、自治体の窓口には「派遣切り」「期間社員切り」にあった労働者が、住む場所と生活保護をもとめて殺到しています。

 こんな事態は、終戦直後の混乱期をのぞいて、いまだかつて一度もなかったことであります。

 業界団体の調査では、三月末までに職を失う人が製造業だけでも四十万人になるといわれています。なんの責任もない労働者を企業の一方的な都合で路頭に迷わせる。こんなことは人道上からいっても絶対に許されないと考えますが、総理はどう認識されていますか。

働くルールの規制緩和が、いまの異常事態をまねいた――大企業の横暴と政治の責任が問われる問題

 なぜこんな異常な事態が起きたのか。

 それは働くルールの規制緩和、とりわけ一九九九年に労働者派遣を業種の限定なしに原則自由化したこと、さらに二〇〇四年には製造業にまで広げたからであります。わが党はそのいずれにも反対しました。これらは、“働く人びとの多様なニーズに応えるため”などといった口実で、景気の調整弁として使い捨て労働を認めよ、という財界の強い要望に応えたものであり、大企業の横暴と政治の責任が鋭く問われる問題であります。総理にその認識はおありですか。

 労働法制の規制緩和は、雇用に責任をもつべき経営者のモラルを崩壊させました。自分の会社で正規の従業員と同じように働かせて莫大(ばくだい)な利益をあげながら、いざとなると生身の人間をまるでモノのように放り出して何の痛痒(つうよう)も感じなくさせたのであります。

 それは、日本経団連の御手洗会長が、自らが経営する大分キヤノンの「派遣切り」「請負切り」の責任を問われて、「キヤノンがやったのではない。請負会社・派遣会社が解雇したものだ」と平然と発言したことに端的に示されているとは思いませんか。

すでに職を失った人々を救済する

 今政府がおこなうべきことの第一は、すでに職を失った人々の救済です。全国に一時避難所を設置すること、再就職支援のための緊急小口支援を思い切って拡充すること、再就職に向けた緊急避難として、住居を失った人にも支給するなど生活保護を柔軟におこなうことであります。

これ以上の被害者を出さないために財界・大企業に断固たる指導を

 第二は、これ以上の被害者を出さないことであります。

 大量の人員整理にはなんの合理的根拠もありません。いま「派遣切り」などをおこなっているのはおしなべて大企業であります。資本金十億円以上の製造業の大企業が二〇〇三年から二〇〇七年までのあいだに新たにため込んだ内部留保は十八兆円、その累計は実に百二十兆円にものぼる膨大なものであります。同じ時期に株主配当も二十一兆円。体力は十分にあります。首切りしないとつぶれる企業などひとつもないことは明らかではありませんか。

 総理は、単なる要請やお願いではなくて、財界・大企業にたいして断固たる指導をおこなうべきであります。

 私たちの調査でも、「派遣切り」にあった多くの労働者が同じ職場、同じ仕事で三年以上働いています。労働者派遣法で定められている、派遣期間の上限、三年をこえた労働者には、派遣先の企業は正社員になってもらうよう申し入れをしなければなりません。それを避けるためにさまざまな脱法的手段をつかって働かせてきたというのが実態であります。法を厳格に適用すれば、本来、すでに正社員として雇用されていなければならない人ばかりであります。こういう人を解雇することは現行法に照らしても許されるものではありません。総理、いかがですか。

派遣法を抜本改正し、99年の原則自由化前に戻せ

 総理が、現在の状態を「危機」と認識されているのなら、それにふさわしく、大企業による不当・不法な「首切り」を阻止するために全力をあげるべきであります。そして二度と同じようなことが起こらないよう、労働者派遣法を抜本的に改正し、少なくとも一九九九年の原則自由化以前に戻すべきであります。

 総理はこのことによって派遣労働者が職を失うかのようなことを言います。しかしそれは当たりません。現に働いている人を直接雇用にすればすむことであります。むしろ派遣労働者のままでいれば、つねに「派遣切り」の不安にさらされるというのがこの間の実態ではありませんか。答弁を求めます。

「9割減産でどうやって生きていけというのか」――中小企業の悲鳴を聞け

 つぎに中小企業の問題であります。

 いま、日本経済の99%をしめ、雇用の七割を支える中小企業が危機に瀕(ひん)しています。

 大企業による中小企業の下請け切りで中小企業の仕事が根こそぎ奪われています。トヨタ、ホンダなどが減産をうちだせば、その数倍もの減産が下請けにおしつけられているのです。「まるでジェットコースターで落とされたような事態だ」「九割減産でどうやって生きていけというのか」。トヨタなど自動車産業の中心である愛知でも、中小企業の街、東京の大田や東大阪、全国各地で業者の悲鳴があがっています。

 総理は、こうした中小企業の現状、大企業による中小企業の仕事切り、下請け切りの事態をどう認識されていますか。

危機打開へ3つの提起

 私は、中小企業の危機を打開するために、緊急に次の三つのことを提起したい。

 一つは、大企業による下請けいじめを防止するために、あらゆる実効ある手だてを講じることであります。受注の中途切り、発注止めなどという大企業の横暴は断じて許されません。

 二つは、中小企業の仕事おこしであります。大企業・大銀行には何十兆円もの公的支援をおこないながら、中小企業予算はわずか千八百八十九億円にすぎません。生活密着型の公共事業など中小企業の仕事を思い切って大幅に増やすべきであります。

 三つは、メガバンクによる貸し渋り、貸しはがしをやめさせることであります。三大メガバンクだけで、この一年のあいだに、大企業への貸し出しは増やしているのに、中小企業には三兆四千億円も減らしています。中小企業への資金供給のために、メガバンクへの監督・指導を抜本的に強化すべきであります。以上答弁を求めます。

後期高齢者医療制度はキッパリ廃止を――保険証取り上げはただちにやめよ

 次に後期高齢者医療制度について聞きます。この制度が始まって一年近くがたとうとしていますが、保険料滞納者が、全国五百八十七自治体で、約一割、およそ十七万人に上ることが、全国保険医団体連合会の調査で明らかになりました。

 原則として滞納が一年間続くと、保険証が取り上げられ、事実上「無保険」状態になります。病気になってもお医者さんにもかかれず、命と健康を脅かす事態が生まれることは明らかであります。この制度の導入までは、お年寄りのいる世帯は、命に直結する問題だとして、保険証取り上げの対象外でした。人の道に反する保険証の取り上げはやめること、そして長年苦労してきたお年寄りにさらに惨めな思いを強いる後期高齢者医療制度は、中途半端な見直しではなく、キッパリと廃止するよう強く求めるものであります。

国民生活全体をあたため、足腰の強い日本経済を――消費税増税は最悪の選択

 総理、アメリカ経済の落ち込みが日本経済にこんなに大きな打撃を与えた理由はなんだとお考えですか。それはこれまでの自公政権の経済運営が、輸出頼みで、内需をないがしろにし、家計を冷え込ませてきたからであります。

 いまこそ本腰を入れて取り組むべきは、雇用を守り、社会保障を充実させる、中小企業や農業を応援する。消費税はせめて食料品は非課税にする。こうして国民生活全体をあたためて、国内でのモノの売り買いを活発にしていく方向への経済政策の転換であり、国民の暮らしに基礎をおいた足腰の強い日本経済をつくり上げていくことではありませんか。

 総理が国民の審判も経ずムリヤリ押し通そうとする消費税の増税は、こうした国民の暮らしに根ざした経済をつくり上げていく上でも最悪の選択であり、もってのほかと言わなければなりません。

 大企業応援から家計を応援する経済政策への転換を、そのことを指摘して、質問を終わります。

【Movie】参院本会議での市田忠義書記局長の代表質問


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp