2009年2月3日(火)「しんぶん赤旗」
温室ガス削減政府の検討委
中期目標 議論迷走
「25―40%」最初から放棄 再生エネ「不可能」
年内合意をめざす二〇一三年以降の温暖化対策の新たな国際協定の焦点が、二〇年ごろまでの温室効果ガス削減の中期目標です。排出量の多い先進国で同目標を決めていないのは日本とロシアのみ。政府の「中期目標検討委員会」が昨年末から活動していますが、そこでの論議は、国連の交渉の場での議論や合意とは大きくかけ離れており、懸念の声が上がっています。
昨年末の国連気候変動枠組み条約第十四回締約国会議(COP14)では、京都議定書のもとでの特別作業部会で、二〇年までに一九九〇年比25―40%の削減を検討する必要があることが再確認されました。これは、温暖化の影響を最小限に抑えるには産業革命以降の温度上昇を二度以内に抑える必要があるとの立場から、合意されたものです。
合意無視
ところが政府の中期目標検討委では、このような国際交渉の議論や確認事項が議論の前提になっていません。
昨年十二月の第二回会合で地球環境産業技術研究機構(RITE)の茅陽一副理事長は、25―40%削減は「COP14では最終的に受け入れられていない」から「比較対象としては取り上げない」と、はなから相手にしない姿勢を示しました。現実には特別作業部会の合意はCOP14で確認され、日本も賛成しています。
検討委では温暖化の進行や、その影響を抑えるにはどんな政策・措置が必要かを正面から論じず、欧州連合(EU)などと比べて日本が損をしないためにはどの程度の削減が許容範囲かなどが、抽象的なモデルを使って盛んに議論されています。
出席者の多くは、温室効果ガス排出を減らすエネルギーとして原発の増加を当然視。オバマ米政権も含め世界的に普及拡大の弾みがつく再生可能エネルギーについては、陸上風力発電は「物理的に不可能」、洋上風力も「多くの課題が残る」(日本エネルギー経済研究所)などとし、大幅導入を最初から想定外にしています。
口実探し
温室効果ガス排出量を大幅に削減できる方策を最初から排除しているため、中期目標については、国立環境研究所の九〇年比25%削減案以外は、「せいぜい10%減が限界」(RITE)など、極めて低い数値しか出ていません。野心的な温暖化対策のための目標設定をめざすのではなく、積極策をとらない口実探しのような議論になっています。
環境NGOの気候ネットワーク(浅岡美恵代表)は、▽温暖化対策の負担ばかりが強調され、対策をとらない場合の被害や、対策をとることによるエネルギーコスト削減などの利点を考慮していない▽大口排出源である電力・産業の対策を「自主計画」に任せるという従来の政策の欠点が克服されていない―などの問題点を指摘。
25―40%削減の中期目標を提案すべきで、「低い目標シナリオは検討から外すべき」だと主張しています。
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