2009年2月15日(日)「しんぶん赤旗」
主張
温暖化ガス中期目標
大幅削減の国際的責任果たせ
二〇二〇年までの温暖化ガス排出量削減の中期目標設定に、政府がようやく動き出しました。一九九〇年比で25%減―7%増の六案を有識者による「地球温暖化懇談会」で検討し、六月までに日本の目標を決めるとしています。
排出量増さえ検討
京都議定書の第一約束期間に続く一三年以降の国際的な排出規制は、十二月に開かれる国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)で決められます。
目安は気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が示した先進国による25―40%削減です。新たな枠組みには途上国の参加も不可欠で、そのためにも先進国は大幅削減の責任を負っています。
欧州連合(EU)は九〇年比で20%、他の先進国が大幅削減に同意する場合には30%削減の目標を確認しています。オバマ米大統領も前政権の姿勢を転換し、排出量を九〇年水準に抑えるとの目標を示しています。
主要な先進国の中で日本だけは中期目標の提示を先延ばしにしてきました。ジャンケンの後出しにも似て、世界の動きを様子見する政府の姿勢は、先進国としての責任を負う自主的立場を欠いたものとして批判されねばなりません。
重大なのは、検討対象としたシナリオには、IPCCの目安を最低限満たしたものは一案だけにとどまったことです。そればかりか、排出量を増加させるという、温暖化対策の目標に値しないものまで含まれています。
こうなったのは、政府の方針が温暖化阻止を最優先にせず、対策に伴う日本の経済コストを抑えることを第一の基準にしているからです。温暖化は日本を含め世界に大きな被害をもたらす以上、日本の経済コストだけにとらわれたやり方では議論は前進できません。
環境省の有識者検討会が十日発表した提言は、「気候変動問題に対応することが経済的な負担になるという考えは終焉(しゅうえん)を迎え」たと指摘しています。
国際的に評価の高い英政府の「スターン報告」(〇六年)は、「大気中の温室効果ガスを安定化させる」ことを前提に必要コストを検討し、低炭素経済へどう移行させるかという立場で議論しました。そのうえで、「気候変動に対する強固かつ早期の対策を行うことによる便益は、そのコストを上回る」と結論付けたのです。
日本政府の検討はこうした報告とは向きがあべこべです。
議論を大きく転換する必要があります。温暖化の被害を最小限にとどめるため、気温上昇を二度に抑えることが最優先課題として明確にされなければなりません。日本共産党はこうした立場から、30%削減を目標とするよう求めています。
財界優先改めて
日本は、京都議定書で義務付けられている目標(一二年までに九〇年水準から6%削減)の達成も危ぶまれています。
中期目標の設定にあたって、経済コストの抑制を第一にして、現状で削減可能と考える排出量を積み上げるやり方はとるべきではありません。
低炭素社会を築き国際的責任を果たす目標に立って、大企業との公的削減協定や再生可能エネルギーの大幅普及など大胆な政策転換で実現の筋道を探るべきです。
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