2009年2月19日(木)「しんぶん赤旗」

主張

教育再生懇報告

構造改革の推進でなく転換を


 麻生内閣の教育再生懇談会が第三次報告を発表し、「大学教育が危機にある」として「高等教育への公的支援の在り方を改革する」ことを提言しました。そこには、大学設置認可の行き過ぎた規制緩和を是正する方策などもありますが、全体としては、大学が直面する深刻な危機を逆手にとり、「大学の構造改革」をいっそう推進しようとするものです。

選別した大学に予算集中

 報告は、「学生及び教育の質の低下」を打開するために「公的支援の大幅な強化」を検討するとしています。同時に、「大学の質の担保が前提」として大学に自助努力を求め、その評価によって大学を選別し、選別された大学に予算を集中するというのです。こうした方向に、今日の大学危機の解決は望めません。

 報告に特徴的なのは、「大学の構造改革」へのまともな反省がまったくみられないことです。しかし、大学の危機を生みだした最大の原因は、そこにこそあります。

 自公政府は、国立大運営費交付金や私立大一般補助など一律の基準で交付される基盤的経費を連続して削減し、その一方で、国の評価によって配分される競争的資金の獲得を各大学に競わせてきました。その結果、国立大は法人化後四年間で六百二億円の交付金が削減され、私立大は経常費にしめる補助の割合が10%にまで落ち込みました。大学の教育研究基盤の弱体化や、大学間格差のいっそうの拡大をもたらし、地方の大学や中小の大学、教育系大学などでは、教育・研究の維持に支障をきたす深刻な事態に直面しています。

 にもかかわらず報告は、大学の基盤的経費の配分にまで評価によって格差をつける、競争的資金化を求めています。国立大運営費交付金については、「骨太方針二〇〇七」が「各大学の努力と成果を踏まえたもの」にする方針をすでに提起し、大学関係者から強い批判が出されています。報告はこの方針の具体化を後押しするとともに、私立大への国庫補助も同様に競争的資金化しようというのです。

 しかも、「取り組みが不十分」とみなす大学には「公費を投入しない」とまでいいます。また、給付型奨学金や授業料免除の拡大などもいいますが、「優秀な学生」に対象をしぼり、ここでも選別を助長するものとなっています。

 こうした方向では、一部の大学や学生に光が当たっても、多くの大学で基盤的経費がさらに削減され、教育・研究が存立しえなくなるとともに、経済的に困難な学生の多くは放置されます。公費獲得のための競争が激化し、教育・研究に腰をすえて取り組める環境が弱まるなど、大学の危機がさらに深まることは明らかです。

基盤的経費の増額こそ

 大学教育の質を高めるためには、なによりも政府がすすめてきた「構造改革」を見直すことが求められます。国立大運営費交付金や私大補助の連続削減を中止し、大幅に増額することにより、経営の安定と教育条件の抜本的改善をはかることこそ必要です。

 そうした施策が実行されてこそ、大学教育の充実・改善をはかる大学の自主的努力も、実りある成果が期待できるでしょう。また、経済的困難をかかえるすべての学生に対して公費支援を強めることこそ国の責任です。



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