2009年2月23日(月)「しんぶん赤旗」

明日への視点

「非正規切り」と労組

全国的反撃へ広がる足場

昆 弘見


 派遣や期間工として働く非正規雇用の労働者が、大企業の職場から大量に放り出されているいまの状況は、日本社会が経験したことがない憂えるべき事態です。厚生労働省の調べでは、三月末までに約十二万五千人、派遣業界団体の試算では四十万人になるとみられ、さらに悪化することが危惧(きぐ)されています。

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 注目されるのは、こうした事態に「人間を使い捨てにする大企業の身勝手は許せない」と、非正規雇用の労働者たちが全国各地で労働組合に加入し、解雇撤回、正社員化を要求してたたかいに立ち上がっていることです。全労連(全国労働組合総連合)の調べによると、昨年十一月以降わずか三カ月余の間に、労働組合を結成、あるいはローカルユニオンに加入して立ち上がった例が全国で五十六に達したといいます。

 非正規雇用の労働者の組織化が、ごく短期間にこれほどの広がりですすんでいるのは、日本の労働組合運動のなかでも初めてといえる画期的な出来事です。派遣社員や期間社員の多くは、正社員になることを夢見て、早出、残業、休日出勤を率先して引き受け、年休もとらずサービス残業もすすんでするなど、正社員以上に必死で働いてきました。その回答が解雇という仕打ちです。その怒りが、たたかいに立ち上がる原動力になっています。

 もちろん、だからといって簡単に労働組合ができるわけではありません。運動に精通している全労連の地方組織、JMIU(全日本金属情報機器労組)など産業別労組が、昼夜を分かたず本腰を入れた支援、援助に力を発揮しています。正社員を中心にした既存の労働組合と非正規雇用の労働者の強い結びつき、連帯のたたかいがいま新しい段階を迎えたと感じます。

 労働組合は、企業と対等に交渉する強い力をもっています。そのことを示す成果もあがっています。大企業が昨年秋から、競うように期間社員の中途解雇をうちだしたとき、いすゞ自動車の期間社員が労働組合を結成し、労働契約法違反だと企業を追い詰め、撤回させました。これが他の企業にも広がり、期間社員の中途解雇の動きはピタッと止まりました。派遣社員もマツダなどで労働組合を結成して派遣会社と交渉して解雇を撤回させたり未払い賃金を支払わせるなど、一人ではできなかった威力を発揮しています。

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 労働組合に結集して大企業と直接交渉することと並行して、発展しつつあるのが行政機関にたいする申告運動です。いすゞ自動車や日本トムソンの労働者が、「偽装請負」で違法に働かされてきた事実を、厚生労働省の労働局に申告しました。全労連は、この申告運動を全国的な大運動としてとりくむとし、諸団体に協力をよびかけました。

 これは現行法を活用して「派遣切り」を止める力にしていこうというものです。非正規雇用の大部分は、たとえ契約期間満了の「雇い止め」であっても、「偽装請負」など違法状態で働かされたあげくに解雇されている実態があります。派遣労働は、同一業務で最長三年を超えて働かせる場合は、派遣先企業が労働者に直接雇用を申し出る義務があります。大企業は、さまざまな違法なやり方で、この義務を逃れてきました。いま解雇されている人たちは、企業が法律を守り、政府が厳正に監督・指導していれば、とっくに正社員になっていた人たちです。

 労働局への申告運動にとりくむ転機になったのが今月四日の日本共産党の志位和夫委員長の国会質問でした。「偽装請負」「違法クーリング」など違法状態で働かされている事例を具体的にとりあげた追及に、舛添要一厚生労働大臣は「偽装請負」を派遣期間として通算することなど重要な答弁をおこないました。

 違法状態で働かせていた事実を法にもとづいて厳正に是正するのは当然です。労働組合をつくり、申告もおこなって、大企業に「首切りやめよ」「雇用責任を果たせ」と迫っていくことは、日本をまともな社会にする意義あるたたかいとして前進が期待されます。(国民運動部長)



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